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過疎がすすんだ山間地域で、買い物の注文をした住民にドローン(小型無人機)が品物を届ける仕組みの実証実験が福井県敦賀市の愛発(あらち)地区で行われた。車の運転ができない高齢者のような「買い物難民」の支援策として期待がかかっている。
雪の積もった集落の上空をドローンが飛んできた。搭載した箱の中には、同地区の住民の前川久子さん(73)が注文した、パックご飯や牛乳、生卵、しょうゆ、豆腐など計6品(約2キロ)。いわゆる「朝ご飯」が入っている。
1月20日に公開された実験の一場面だ。
市街地のスーパーに注文された前川さんの品物は、まず、地区でも市街地に近い愛発公民館に届いた。そこでドローンに積み込まれて、約700メートル離れた疋田第1会館まで飛行すること3分ほど。同会館に着陸して、切り離された箱が、待っていた前川さんの手に渡った。
前川さんは「ドローンが降りてきた時は迫力があった。地区には、運転免許を返納した一人暮らしの高齢者も多い。すごく助かると思います。本格的にサービスが始まったら、私も利用したい」と話した。
実験は敦賀市と、物流大手で買い物代行サービスなどにも取り組む「セイノーホールディングス(HD)」(岐阜)、ドローン開発会社「エアロネクスト」(東京)などが実施。1月20、21の両日に約10人の住民に荷物を届けた。
注文専用のアプリを入れたスマートフォンやパソコンから注文する計画で、荷物は計5キロまで運べる。重い荷物や悪天候の時は、トラックによる陸送で運ぶ。ドローンは、経路をあらかじめ設定し、自動操縦で飛行する。ただ、実験では、操縦機を持ったスタッフが離着陸場所で、飛行を確認しながら事故に備えた。
愛発地区は、318世帯、716人が住む。昨年、地区にあった唯一のコンビニが廃業し、商店や薬局もない。市街地からは車で10分ほどだが、車を運転できないお年寄りらも多い。
今後、住民と相談して、ドローンによる配送拠点や、住民の受取場所を決めて、2022年度中の実用化を目指す。渕上隆信市長は「この取り組みが実用化されて、地域に定着してくれたら」と期待を込める。
一方、エアロネクストの田路圭輔・代表取締役CEOは「敦賀は海、風、山など様々な自然環境での実証実験ができる。この場所で経験を積み上げ、全国で市街地と過疎地の物流をつなげる取り組みを実用化していきたい」と力を込めた。(佐藤常敬)