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Engadget Logo エンガジェット日本版 PS5の新コントローラDualSenseを試す。アダプティブトリガー・ハプティックフィードバックの表現力に驚き

プレイステーション5の新型コントローラ、DualSense (デュアルセンス)の使用感レビューをお伝えします。

PS5は触感や立体音響による次世代の没入感を前面にアピールしていますが、デュアルセンスは触感の部分を担う大きな売りのひとつです。

目玉機能は振動の表現力が増した「ハプティックフィードバック」、LRトリガーの抵抗が変わる「アダプティブトリガー」の2つ。

このデュアルセンスのチュートリアルと本体の性能デモを兼ねて、PS5にはアクションゲーム『ASTRO'S PLAYROOM』が最初から遊べる状態でプリインストールされています。

デュアルセンスとは。新機能の基本

デュアルセンスは、初代プレイステーションの振動コントローラDUALSHOCKから、PS4のDUALSHOCK 4まで続いてきたデュアルショックを置き換える新しいコントローラ。(諸般の事情で振動なしだったSIXAXISは番外)。

基本的なレイアウトは従来のコントローラを引き継ぎつつ、振動がより高精度な「ハプティックフィードバック」に、LRトリガーが抵抗を変えられる「アダプティブトリガー」になったことが大きな進歩点です。

(ほか、マイクを内蔵してコントローラだけでボイスチャットができる、PSボタンの下にマイクミュートボタン、充電や有線接続がUSB-Cといった進歩点もあります。)

ハプティックフィードバックは素材・感触が伝わる表現力

ハプティックフィードバックは、簡単にいえば「振動がより繊細に、表現力を増したもの」。PS4のDUALSHOCK 4は、左右グリップ部分に内蔵したモーターの先に重心を偏らせたおもりを付けて、回転させることでブルブルという振動を発生させていました。

この仕組みでは振動の強弱はある程度つけられるものの、大きなおもりがモーターで回っているため立ち上がりが遅く、細かく制御できないため、せいぜいブルブルやブーン、ドスン(実際は「ブルッ」)といった擬音で想像される動きを補完する使われ方に留まっていたのはご存知のとおりです。

しかしデュアルセンスでは、左右グリップ内部の振動子がより細かく制御できるようになったため、軽く鋭いコンコン、コツコツといった動き、ザラザラ、ズルズルといった「感触」を感じられる振動を再現できるようになりました。

実際にASTRO's PLAYROOMで試してみた感触は、

・すべての素材、動きに「感触」がある

ASTRO's PLAYROOMは、ゲームとしてはマリオ64的な3Dプラットフォーマーが基本。本体プリインストールのコントローラデモ兼用ソフトとして、ハプティックフィードバックの対応も徹底しています。

まず驚いたのが、主人公アストロが歩いたり、滑ったり、泳ぐ環境にそれぞれ別の「感触」が設定されていること。

従来のコントローラの振動でも、主人公やゲーム上特殊な地形に踏み込んだり、自車がダートにはまったことを示すためブーン、ブルブルと動いて伝えることはありました。しかしアストロはただ床を歩くだけでもデュアルセンスが微妙に振動、というより感触を伝えます。

平坦な床を歩くだけで常に動きがあるのは、従来の「振動」を想像すると邪魔に思えますが、デュアルセンスのハプティックフィードバックは非常に繊細な細かい動きができるため、「常にブルブル」で手が痺れるわけではありません。

たとえば金属の床ならばコツコツ、樹脂の床ではもう少し軽くトントン、砂ならサクサクといったように、アストロが歩く動きに対する反応、感触を再現します。

ASTRO's PLAYROOM で特に感銘を受けたのが、冒頭で大きなファンが風を起こし砂を吹き上げる場面。砂嵐に向かって進んでゆくと、従来のコントローラならば単にブーンと震えていたであろう場面で、ザーッという振動のなかにチリチリとした鋭い感覚が混ざる、風の中に鋭い硬い粒子が混ざっていることが分かる感触が再生されます。

実際に振動しているのは左右のグリップ単位ですが、それでも映像と音と精度の高い振動、そして左右のバランスで、歩き回れば砂嵐が吹き抜ける方向が手で感じられるようになっています。

従来のゲームでも、主人公の足音で床の素材や感触を伝えることは一般的でしたが、デュアルセンスのハプティックフィードバックはこの効果音と振動の境界が薄れ、一体化する技術です。

敢えて手元のデュアルセンス内蔵スピーカーをオフにして、テレビの音量もなくして振動だけに集中してみると、ただの「精度の高い振動」になりますが、効果音と映像、視聴覚と同時に触覚に伝わることで、あたかも主人公の感覚が伝わるように錯覚する効果があります。

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エンガジェット日本版 PS5の新コントローラDualSenseを試す。アダプティブトリガー・ハプティックフィードバックの表現力に驚き

キレのよくないオンオフと多少の強弱だけだった従来の振動と比較すると、大げさにいえばビープ音のみから、任意のサンプリング音を再生できるようになったほどの飛躍。手にも耳と同じくらい豊かな情報量が伝わるようになりました。

アダプティブトリガーはプログラマブル。全く違った感触に

もうひとつの目玉「アダプティブトリガー」は、LRトリガーの抵抗を動的に変更できる機能。

従来のコントローラではバネで一定の抵抗があるだけでしたが、アダプティブトリガーではウォームギアとモーターを使った仕組みで、トリガーの重さを制御します。

面白いのは、単に重いトリガーと軽いトリガーを再現できるだけでなく、引き始めから引き抜くまでのわずかなトラベルのあいだにも、ゲーム側の状況に応じて動的に抵抗を制御できること。

たとえば最初は軽く反応しない「アソビ」で、ある程度引くと重く引っかかり、そこから意識して力を入れることでカチリと力が伝わり発射、あとは山を越えてストンと引き抜けるといった、プレーヤーの力に応じたインタラクティブな反応をプログラムできます。

ASTRO's PLAYROOMの序盤でこのアダプティブトリガーを使うのは、主人公アストロが一本足のスプリングスーツ的な乗り物に搭乗して動く場面。

トリガーで固いスプリングを押し込んでいるような、スプリングをロックする機構がカチカチと引っかかるような感触です。

おそらく従来の軽いバネだけのLRトリガーでも同じ動きは再現でき、ゲームとしての遊び方は変わらないはずですが、アダプティブトリガーの重さが加わることで、軽く押し込んでピョンと飛ぶのか、ギリギリと最後まで押さえつけてビョーンと飛び上がるのかの感覚が指に伝わります。

(こちらは修理業者のTronicsFixが公開した分解動画より。右上がトリガー。トリガーの回転の動きをネジ歯車とモーターで制御する仕組み)

ハプティックフィードバックの振動は、スティックなりの入力に対するフィードバックとして左右のグリップから手全体に伝わりますが、アダプティブトリガーは力を入れる指に対して抵抗が返ってくるため、よりダイレクトに触感を再生するデバイスになっているともいえます。

音や映像と一体化した没入感、新しい表現の開拓に期待

高精度な振動で触感を再現できるゲームコントローラといえば、ニンテンドースイッチがHD振動の名前で導入しています。

初期の1-2-SwitchなどJoy-Conの機能デモ的なソフトや、意識的に触感を手がかりにした作品では非常にユニークで効果的な使い方があった一方で、一般的に「スイッチは視覚・聴覚に加えて触覚も伝わる新しいゲーム機だ!」と定着したとは言い難く、革新的な新しい機能というよりは、その名のとおり従来の振動が「HD」に高精細化した、漸進的な進歩の扱いです。

PS5 デュアルセンスのハプティックフィードバックも、そうした意味でまったく新しい、従来にない機能というよりは、あくまで表現力が増した範疇。あらゆる素材、あらゆる環境やアクションにそれぞれの触感フィードバックが用意されているASTRO's PLAYROOMも、特に予備知識なく触ったプレーヤーがあっと驚いてコントローラを落とすほどではありません。

しかし表現力向上の幅は大きく、従来の効果音と視覚効果、もうひとつの触覚機能であるアダプティブトリガーと一体化することで、総合的な没入感に大きく貢献しているのは確かです。

PS5ゲームは何が変わる?開発者が語るコントローラ新機能の活用法

ロンチタイトルの開発者たちが語った活用法は、たとえば「トリガーの重さにキャラクターの疲労を反映する」(NBA 2K21)、「金属と金属がぶつかり合う感覚、ボスの一撃の重さ、手の中で火花を散らす魔法を感じられる」(ダークソウル)、銃が詰まったときはトリガーが物理的に引けなくなる(デスループ)、武器それぞれの独自性や使ったときの気持ちよさが向上(ホライゾン禁じられた西部)。

まだデュアルセンスを試す前は、こうしたアイデアを聞いても「……ふーん?」程度の印象でしたが、しかし触感を再生するスピーカーのようなハプティックフィードバック、動的に指応えが変わるアダプティブトリガーを実際に使ってみたあとでは、今後の活用タイトルを触るのが非常に楽しみになりました。

独自機能は独占の売りになる一方で、マルチプラットフォームで展開するサードパーティーにとっては大きなリソースを割きづらく、結果としてお茶を濁すような実装に留まりがちなジレンマもありますが、そこはPS3世代の反省から開発者フレンドリー方針に舵を切ってPS4を成功させたソニーのこと、開発者サポートも万全と信じたいところ。

PS5オンリーゆえにマルチではあまり使われない空気機能ではなく、マルチだけどせっかくならDualSenseが使える PS5でやりたいになるかどうかが勝負です。

ソニー プレイステーション5先行プレビュー 本体編 #PS5