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ついに日本でデビューしたEcho Buds。使ってみると音もなかなかいいし、ノイキャン性能もいい感じだし、ハンズフリー操作が便利だしといった感じで好印象だった。【もっと写真を見る】
写真:アスキー
高水準なANC機能を持ちつつ比較的低価格に提供 Amazonの完全ワイヤレスイヤホン「Echo Buds」が第2世代となり、ついに日本でも発売になった。Echo Budsはまず米国で2019年に登場。この第2世代機も米国では昨年5月から販売中だ。充電ケースの違いで2種類があるが、価格はいずれも1万円台前半に収まっている。USB Type-C充電ケース付きの標準モデルが1万2980円。ワイヤレス充電対応ケース付きは1万4980円で、Echo Buds用に作られたAnker製のPowerWave 5Wワイヤレス充電パッドなどQi対応デバイスを介して充電ができる(加えて7.5W以上のUSB充電器も必要)。完全ワイヤレスイヤホンは低価格化が進んでおり、そこまで強いインパクトではないが、アクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)機能付きでこの価格であるため、なかなかリーズナブルな製品と言えるだろう。さらに、ANC機能は内側(フィードバック)/外側(フィードフォワード)マイクの両方を使用して精度を高めるハイブリッド型だ。また、Alexaアプリを使い、適切なイヤーチップを選び、密閉性が確保されているかを計る機能も持つ。このANC機能はAmazonが独自にカスタマイズしたもので、報道発表の文には「周囲の音に合わせて鼓膜内の音圧を推定」といった表現がある。クアルコムが提供する「Adaptive ANC」では、イヤホンの装着状態(密閉性)や周囲の騒音によってANCの効き具合を動的に変える機能があり(静かな環境ではANCの強度を下げ、騒音が多い環境では強度を上げる)、市場ではこうした機能を搭載する製品が増えている。ただ、別途開催された説明会で製品担当者の話を聞いた限りでは、Echo Budsにそこまでの機能はないようだ。 イヤホンを装着する時間が長く、ハンズフリーで使いたい人に 少々細かい話から入ったが、このEcho Budsの魅力は声の操作を取り入れ、さまざまな機能を利用できる点にあると思う。音楽再生はもちろんだが、ニュースやAudibleといった、音を使った情報収集やエンターテインメント、さらにワークアウト時のBGMや家電操作まで幅広い楽しみ方が可能だ。スマホにインストールしたAlexaアプリと連携を取ることで、ジョギングをするため30分だけ音楽を流す、帰宅の少し前にエアコンを起動しておき、部屋に着いたときに快適な室温にするといった様々な応用が可能だ。また、スマホ中心の生活を送っていると、ほぼ一日中イヤホンを着けたままでいることがよくある。スマホで聴く音声も音楽だけでなく、動画やゲームだったり、ネットラジオやPodcastのようなトークだったり、ウェブ会議の通話だったり、スマホから発せられる通知や天気/ニュースなどの情報だったりと多様化している。音声であれば目を奪われないため、移動中やSNS/メールチェックをしながらでも利用できるので、意識するしないに関わらず、イヤホンで音を聴く時間が増えている人は多いのではないだろうか。これにボイスコマンドを組み合わせることで、ハンズフリーの快適さが加わる。Echo Budsケースから取り出した状態で「アレクサ」と話しかけると、ポンと信号音が鳴り、ボイスコマンドを受け付ける状態になり、スマホのAlexaアプリと連携して様々な機能が利用できる。例えば、料理中にちょっとゆで時間を計るためのタイマーであったり、すぐにメモが取れない状況でのボイスメモだったり、人によっては就寝前、布団に入ったままの状態で電気を消したりするかもしれない。これらはもちろんスマホでも可能だが、充電スタンドから取り上げて手に取ったり、ポケットから取り出して画面を見るのは意外に手間だ。声だけで済むほうが便利に感じる状況は意外と多いと思う。Echo Budsは、こういう1日の生活の中で新しく増えてきたシーンに合ったガジェットと言える。通常なら本体のボタンやアプリで操作する、外音取り込み(アンビエントサウンド)のオン/オフや選曲操作も音声でできるようになっており、何かをしながらの操作も快適だ。Alexa対応のイヤホンというのは増えているのだが、やはりAmazonが自ら開発しているということもあり、Alexaアプリとの連携性は当然のように高く、よりスムーズに使うことができる。 かなりの高音質、ガジェット系イヤホンと侮ってはいけない 機能や音質についても簡単に触れておこう。装着してみると非常に密閉感が高く、イヤホン自体の遮音性が高いことが分かる。これだけで周囲の騒音をアイソレートして、音楽に集中できる印象だ。これにANCの効果が加わり、中低域のノイズがカットされ、静寂感が増す。Amazonの説明では、100~1000kHzの帯域で第1世代機に比べて平均6dB、ノイズを低減できるようになっているそうだ。幹線道路沿いで車などの走行ノイズが多い場所で使ってみたが、ANC性能は十分と感じた。一方、外音取り込みはANCと切り替えて使用する形になっている(両方オフという状態にはできない)。標準では本体の長押しで切り替わる。声の操作も可能だ。ひとくちに外音取り込みというが、機種によっては残留ノイズが高かったり、細かい音を拾いすぎたりして逆に聴きにくく感じるものもある。そんな中、Echo Buds(第2世代)は中音域を中心に、危険などの察知に重要な情報が分かりやすいチューニングになっている。目の前にいる人との会話や、周囲で何かが急に動いたとか、大きな物音がしたということは分かるがそれ以外の余計な音は目立ちにくい。外で使っていると、多少風切音が気になるが、全体のできはよい感触を持った。音質については密閉性の高さが好影響を及ぼしている。騒音のある屋外にいても音の細かい情報がしっかりと把握できる。また、周囲の音が気にならないので、カフェなどで勉強に集中したい場合にもいいと思う。低域はしっかりしていて密度感がある。一方でボーカルは明瞭で、音の輪郭がはっきりしている。高域も良く伸びて透明感があると言っていいと思う。ソースによっては神経質に聴くと子音やハイハットに若干の荒れや歪み感が出るが、ここは圧縮されたBluetoothの伝送ではやむを得ない面がある。トーンバランスとしては中庸で、大きなくせはない。メリハリ感があってハッキリとした音調が好きな人には特にいいと思う。ポップスやロック、クラシックなど、どんなジャンルでもそつなくこなせる。オーディオではなくガジェットの感覚で聴き始めると、予想以上の高音質に驚かされる人が多いはずだ。特にアンプの性能がいいのか、ドライバーの駆動に余裕感があるように思える。ちなみに、Echo Buds(第2世代)が採用しているBluetoothのSoC(Realtek RTL8763C)は、AACにも対応しているようだが、Amazon自体はBluetoothの対応コーデックを発表していない。iPhoneではどのコーデックで再生されているかを確認できないのだが、ソフトキーボードのタップ音の反応などは比較的早く、ストレスを感じない。ほかのBluetoothイヤホン同様、ゲームや楽器アプリはさすがに難しいと思うが、意識するような遅延はあまり感じずに使えると思う。バッテリーは本体5時間、ケース充電併用で約15時間持つ。これはAlexaを使用する状態(ウェイクワードを常に待機した状態)での数値となる。途中充電をはさみつつであれば、1日中装着している用途でもそれほど問題を感じずに使えそうだ。 声での操作が思いのほか快適 Echo Budsを少し使ってみた感想としては声の操作が非常に快適に感じた。筆者の場合、自宅でもEchoスピーカーを良く使用しているが、利用頻度の高いものにタイマーがある。目覚ましとしての利用もそうだが、パスタのゆで時間や餃子の焼き時間を教えてもらったり、外出の予定がある場合は少し前にアラームを鳴らすようにするなど高頻度に利用している。Echoスピーカーの場合は、その部屋に置いていないといけないが、身に着けて使うEcho Budsであれば大声を出さずにその場でこうしたアラームの設定や確認ができる。また、時間指定で音楽を鳴らしたり、声でジャンルやアーティスト名を指定できる点がなかなか便利で、家事や仕事の合間に聴く音楽を選ぶ手間が軽減された。問題点があるとすると、自宅にはAlexa対応デバイスが増えすぎている点で、密閉感が高いぶん、Echo Buds以外のデバイスが別室で同時に反応しているのに気付かなかったりすることぐらいだろうか(こんなことで困る人はあまりいないかもしれないが)。もうひとつよく使う用途としては、ニュース/現在時刻/天気などの確認だ。筆者の場合、NHKや日経などのほか、経済系、オーディオ系、ゲーム/アニメ系などをピックアップしてフラッシュニュースに設定しているが、これを駅で電車を待っている時間など外で聴けるのはなかなかうれしい。また、radikoに加えて、超A&G+のようなスキルもあるので、ラジオ好きにも便利である。また、最近は街中から時計が減っていたりするが、移動中に声で時刻を知れたり(散歩やジョギングの際には意外と便利)、NAVITIMEの乗換/運行情報スキルなどを活用して、電車の遅延情報を知ることなども可能だ。繰り返しになるが、このあたりはスマホでも可能だ。ただ、両手がふさがっていたり、目で見れなかったりというシチュエーションは日常生活で多々発生するので、そういうとき耳だけで情報が得られるというのは大きいと思う。これは「ながら」で何かできるというだけでなく、最近目を使いすぎて疲れているという人にも有効ではないだろうか。声の操作は混雑した繁華街では少々気恥ずかしい面があるが、自宅で家事などをこなす際、あるいは手がふさがってしまう自転車などでの移動中(これはアンビエントサウンドにして、音楽は鳴らさないなど安全に配慮した方がいいと思うが)でも手軽に情報を得られるのは便利だ。Echo Budsは音質も十分によい。便利さと高音質が両立した魅力あふれるデバイスだと思う。 文● ASCII
最終更新:アスキー