10
10
スマートフォンに何を求めるかは、人によって、さまざまだが、国内市場においては、俗に『日本仕様』と呼ばれる日本のユーザーが求める仕様がある。
たとえば、もっとも独自性があるもの言えば、やはり 非接触ICカード技術の「FeliCa」が挙げられる。「おサイフケータイ」のサービス名で広く知られ、国内ではすでに15年以上、携帯電話やスマートフォンに搭載されてきた実績がある。
グローバルでは「NFC Type A/B」を利用した非接触決済サービスがようやくスタートしているが、国内ではすでに交通系サービスやクレジットカード決済、会員証サービスなど、さまざまな対応サービスが提供され、業界標準の地位を確立している。FeliCa搭載スマートフォンでの電子マネーの利用率は数十%程度に達し、FeliCaの有無によって、スマートフォンの売れ行きが大きく左右されるとも言われる。
FeliCaと並び、もうひとつ国内で ユーザーのニーズが高いのは、防水防塵だ。高温多湿という気候に加え、近年はゲリラ豪雨などに見舞われることもあるうえ、水廻りなどで作業をするときにも使いたいというニーズがあり、ケータイ時代から防水機能を求める声はかなり高かった。
端末をある程度、長く使っていくうえで、水濡れや水没といったトラブルに遭っても利用できる安心感は大きく、こうしたトラブルを経験したユーザーが「次は安心できるものを」と、防水防塵対応のスマートフォンが選ぶ傾向が強い。
ケータイ時代は国内向けの独自仕様という印象だった防水防塵だが、ここ数年、グローバル市場で展開するスマートフォンでも徐々に対応例が増えてきている。ただ、その多くはハイエンドモデルが中心で、ミッドレンジで対応するスマートフォンは限られているのが実状だ。
いずれも日本のユーザーにとって、スマートフォンを選ぶうえでの重要なポイントとされているが、グローバル市場でビジネスを展開するメーカーにとっては、『日本仕様』をどうするのかがひとつの課題と言われている。
現在、スマートフォンはグローバル市場全体で、年間に約13億台が出荷されているのに対し、国内市場は年間に約3000万台を超える市場規模とされる。
通信方式や対応バンドなどについては、グローバル市場と国内市場で共通化されていたり、各メーカーとも多少の変更には対応できる体制を整えており、日本語化などのローカライズも基本的にはソフトウェアの修正で対応できる。
しかし、 FeliCaや防水防塵はいずれもハードウェアとしての仕様変更が必要になるため、グローバル市場でビジネスを展開するメーカーとしては、市場規模を鑑みてもなかなか日本独自モデルの開発に踏み出しにくい状況にあった。