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■連載/石野純也のガチレビュー
Bluetoothイヤホンとしてだけでなく、イヤホン全体で見ても高いシェアを誇るアップルの「AirPods」に、新モデルが登場した。それが、「AirPods Pro」だ。“Pro”と銘打つだけに、同モデルは新たにアクティブノイズキャンセリングに対応。設計もAirPodsから一新し、装着感、音質などが向上している。
形状も、シンプルになった。“耳からうどん”と揶揄されることもあった従来型のAirPodsよりも、耳から飛び出す棒状のパーツが短くなり、操作方法もタップから、クリックに変っている。一方で、iPhoneやApple Watch、iPadなどのアクセサリーという位置づけはそのまま。本体のカバーを開けただけですぐにペアリングできたり、耳に装着するとすぐにオンになって使い始めることができたりする簡単さは、初代AirPodsから受け継がれている。
では、新しくなったAirPods Proのノイズキャンセリングはどこがすごいのか。音質や使い勝手、バッテリーの持ち具合など、その実力を検証した。
初のノイズキャンリング対応AirPodsとなる「AirPods Pro」
初代、2世代目と進化してきたAirPodsだが、その形状は一貫していた。サッと装着できる半面、耳の形によっては少々緩くなるため、移動しながら使うには、やや不安になることもあった。これに対し、AirPods Proは、いわゆるカナル型のイヤホンに生まれ変わった。利用時にはイヤーチップを装着するスタイルで、サイズもS、M、Lと3種類が付属する。
イヤーチップの装着方法は、一般的なカナル型のイヤホンとは大きく異なる。通常は、イヤホンの筒状のパーツにグイッと押し込み、イヤーチップがそれを包み込んでホールドするのに対し、AirPods Proは、イヤホンそのものにイヤーチップを取り付ける形になる。スピーカーとハウジングの間にイヤーチップを挟み、突起で固定するというのがAirPods Proの装着方法だ。そのため、取り付けや取り外しが簡単。引っ張るだけで簡単に外せて、装着も位置を合わせて軽く押し込むだけで、カチッと止まる。
AirPodsとしては初のカナル型で、イヤーチップを着脱する仕組みになった
この接続方法だと、イヤーチップが外れやすいように思われてしまうかもしれないが、意外と本体とはしっかり固定されている。かなり強い力を入れて引っ張らない限り、抜けない仕様だ。通常使用であれば、耳から抜く時にイヤーチップが外れてしまう心配はしなくていいだろう。筆者もこの1週間、AirPods Proを使い続けているが、イヤーチップが意図せず外れるようなことは1回もなかった。
装着感は非常に軽く、何も着けていないかのようだ。耳にぴったりとはまる窮屈な感じがなく、長時間着けていても疲れないのがうれしい。実はAirPods Proには空気を通す穴があり、これによって、耳の中と外の気圧を均一に調整するようにしているという。着け心地がいいのはそのためで、人間にとって優しいイヤホンと言える。
軽い装着感で、耳に圧迫感がなく、着けやすい。カナル型が苦手な人でも、利用できそうだ
イヤーチップが正しいサイズかどうかは、iPhoneを使ってチェックすることができる。耳の中と外のマイクを利用し、音を比較してチェックしているそうだ。装着状態の確認は、iPhoneの「設定」から行う。「設定」アプリで「Bluetooth」を選択し、「○○のAirPods Pro」の横にある「i」のアイコンをタップ。ここで、「イヤーチップ装着状態テスト」をタップすると、正しいサイズが選ばれているかどうかがわかる。着け心地にまでこだわっていることは、こうした機能から見て取れる。
装着状態をチェックする機能も用意されている
AirPods Pro最大の特徴が、アクティブノイズキャンセリングだ。本体の操作部分を長押しすると、ノイズキャンセリングモードと環境音をマイクで取り込む「外部音取り込み」モードを切り替えることが可能だ。ノイズキャンセリングをオンにすると、スッと外部の騒音がフェードアウトしていく。仕組みとしては周囲のノイズと逆位相の音をぶつけ、ノイズをかき消すものだが、特に低音部の効きがいいように感じる。
例えば、自宅やオフィスであれば、エアコンの送風音はほとんど聞こえなくなる。電車で移動している際に使ってみたが、ガタンゴトンという音もかなり小さくなった。静寂が訪れたといっても過言ではないだろう。音楽を流せば、完全に周囲のノイズが消えたように思えるはずだ。一方で、人の声は小さくなるが、まったく聞こえなくなるわけではない。駅のアナウンスなども、聞くことができた。キーボードの打鍵音など、やや高めの音も完全には消せていない。低音から中音あたりのノイズはかなり削減できている一方で、完全に何も聞こえなくなるわけではない点には注意が必要だ。
iPhone側でも、両モードを切り替えられる
移動中に周囲の音が聞こえないと、事故にあってしまう危険もある。このような時は、ノイズキャンセリングをオフにし、外部音取り込みモードにするのが正解だ。このモードにすると、外側のマイクで周囲の音を拾って、耳に直接届けてくれるようになる。直接外部の音が聞こえているわけではなく、やや音の解像感が低くなったような違和感はあるが、それでも不自然というほどにはならないのは、遅延が少ないからだろう。相手に対して失礼になってしまうかもしれないため、オススメはできないが、AirPods Proを装着したまま、試しに話してみたところ、普通に会話が成立した。
ただし、音楽を流していると、いくら外部音取り込みモードにしていても、周囲の音は聞こえなくなってしまう。ノイズキャンセリングモードにしている時よりはマシではあるものの、外を歩いている時に危険なことに変わりはない。移動時の利用は避け、特に自動車や自転車、バイクなどの運転中の利用は厳禁だ。
マイクで周囲の音を拾い、そのまま耳に流す仕組み。遅延が少なく、自然に聞こえる
ちなみに、長押しの操作にはノイズキャンセリングの切り替えのほか、Siriを割り当てることができる。標準では、左右ともにノイズキャンセリングの切り替えになっているが、これは設定で変更可能だ。Siriは「ヘイ、Siri」と話しかければ起動するため、あえて設定しておく必要はないかもしれないが、街中で呼びかけるのはかなり気恥ずかしい。こっそり天気を聞きたい時などは、Siriを呼び出す設定をしておくといいだろう。
長押しの設定は、iPhone側で変更することができる
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