ソニーの360/ハイレゾ/イヤホンはこれ...

18
06

ソニーの360/ハイレゾ/イヤホンはこれからどうなる?モバイルプロダクト部門責任者に聞く

配信

2コメント2件

(写真:PHILE WEB)

ソニーの360/ハイレゾ/イヤホンはこれからどうなる?モバイルプロダクト部門責任者に聞く

ソニーがAndroid OSを搭載するハイレゾ対応ウォークマンのフラグシップモデルや、1日中身に着けて “ながら聴き” が楽しめるワイヤレスイヤホン「LinkBuds」を矢継ぎ早に発表し、注目を浴びている。今年もソニーのポータブルオーディオは熱く盛り上がりそうだ。穴あきドライバー完全ワイヤレス「LinkBuds」など新しい提案を行う今回はウォークマンやヘッドホン・イヤホンなどが含まれる、ソニーのモバイルプロダクトの事業責任者であるソニー(株)ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 事業部長の中村裕氏に、同社の新製品にかける意気込み、360 Reality Audioやハイレゾに関わるオーディオビジネスの展望などを聞く特別な機会を得た。■オーディオからモビリティにも広がる360 Reality Audioソニーはクリエイティビティとテクノロジーの力が生む「感動」を、「人に近づく」サービスやプロダクトにより多くの人々に届けることを企業のポリシーとして掲げている。2021年4月から現職に就く中村氏は、自身が担当する「音」に関わるモバイルプロダクトの領域を、感動を創り出すクリエイターと多くの人々を結びつける最前線のひとつに位置付ける。日本国内でも昨年から本格的に立ち上がってきたソニー独自の立体音響技術「360 Reality Audio」には、クリエイターとコンシューマーの双方から良好なフィードバックがあるようだ。360 Reality Audioに対応するコンテンツを充実させるため、ソニーは数年来から音楽レーベルやアーティストなど多くのクリエイターと密接に連携してきた。2021年には初めてのビデオ付き360 Reality Audio対応コンテンツを「Artist Connection」アプリより公開。同年春にはサウンドエンジニア向けの制作ツール「360 Reality Audio Creative Suite」の販売を開始した。ソニーが360 Reality Audioの普及拡大に全力を投じる強い意気込みが周囲に伝わったことが、共に歩むパートナーの背中を押した。中国ではネットワークサービス大手が運営する「Tencent Music」も360 Reality Audioに対応する音楽コンテンツの配信を始めた。360 Reality Audioに対応する楽曲は順調に増えて、現在1万曲以上が揃う。ソニーにはR&Dセンターによる基礎研究の成果を、エレクトロニクスに限らずエンターテインメントのカテゴリーも含むグループ全体の共有資産として活かせる体制が整っている。例えば360 Reality Audioはモバイルプロダクトだけでなく、据え置きスタイルのホームオーディオやスマートフォンにも対応製品がある。今後ソニーとして事業化を目指すモビリティの分野でもまた、独自の付加価値を生むキーテクノロジーとして360 Reality Audioが大事な役割を担うことになりそうだ。■LinkBudsが「ながら聴き」スタイルを提案するために欠かせなかった「あること」とは中村氏が担当するモバイルプロダクトの領域では、やはり直近の数年間で左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンの成長が際立っており、市場規模の拡大にも貢献しているという。中村氏によると、従来のオーディオや音楽を熱心に愛するファンの外に完全ワイヤレスイヤホンのユーザーが拡大する傾向が、顕著に表れているそうだ。「付属アクセサリーとして、携帯電話端末の商品に有線タイプのイヤホンが同梱されることが少なくなり、ワイヤレスイヤホンを買い求める方々が増えています。音楽などエンターテインメントをしっかりと楽しめる良いものを選ぶ方から、スマホと組み合わせて音声通話も含むマルチな用途にワイヤレスイヤホンを活用するガジェット好きな方まで、幅広い層のお客様がワイヤレスイヤホンに寄せる関心や期待に、今後もソニーは応えていきたいと考えています」(中村氏)2月25日に発売する新製品のLinkBudsでは、開放型構造のワイヤレスイヤホンを常時装着して、音楽の「ながら聴きも楽しむ」という新しいライフスタイル提案に力を入れている。常時装着による負担をユーザーに感じさせないために、ソニーではLinkBudsを小型化・軽量化して、用途に沿った形状を作り込むことに腐心してきたと中村氏は振り返る。ドーナツ型の振動板を搭載するイヤホン全体を耳に挿入する装着スタイルがより安定するように、本体の重心をていねいに最適化しながら設計を詰めた。LinkBudsは装着した時に、耳から飛び出して見えない。女性のユーザーにも歓迎されそうな、このデザインを実現するためにトライアル&エラーが繰り返された。というのも、耳に装着したイヤホン全体が人体に言わば “包み込まれる” 格好になるため、通信の接続性を確保することがやや困難になるからだ。ソニーがモバイル通信機器の分野で培ってきた技術を駆使しながら、イヤホンに内蔵するアンテナの配置を最適化して、高い通信感度を持たせているという。■音のARは、とにかく体験してほしいLinkBudsには音によるAR(拡張現実)エンターテインメントを楽しむための機能も搭載されている。イヤホン本体にはコンパスとジャイロセンサーが内蔵されており、ソニーによるARスマホアプリ「Locatone(ロケトーン)」などを再生した時に、ヘッドトラッキング機能を活かしたエンターテインメントが楽しめる。LinkBudsとLocatoneアプリによる音のAR体験には、YOSAOBIの楽曲「大正浪漫」のストーリーと “街歩き” が連動する新感覚のサウンドエンターテインメント「YOSAOBI SOUND WALK」がある。昨年秋から好評を博してきたサービスが、このほど期間を延長して実施されることが決まっている。中村氏は「LinkBudsのAR体験をぜひYOSAOBI SOUND WALKで味わってほしい」と呼びかける。また今後も音によるAR体験が活かせるサービスを、既に発表されているナイアンティックやマイクロソフトをはじめとするパートナーと一緒に盛り上げたいと抱負を語った。■これからどうなる?ソニーのハイレゾこの春ついに待望のハイレゾ対応ウォークマンのフラグシップモデル「NW-WM1ZM2」と「NW-WM1AM2」が発売される。2013年にはソニー初のハイレゾ対応ウォークマン「NW-ZX1」が誕生から10周年のアニバーサリーを迎えることになるが、これからソニーではハイレゾリューション・オーディオをどのように盛り立てていくのか。中村氏の考えを訊ねた。「近年は360 Reality Audioを前面に押し出してきましたが、もちろんハイレゾリューション・オーディオも継続的に注力しています。これからも変わることなくソニーのハイレゾに対応する製品や独自の技術をアピールします。Android 8以降、Android OSを搭載するスマートフォンにハイレゾ再生機能が標準搭載されました。そして昨年Amazon Music Unlimitedに続き、Apple Musicがハイレゾ音質のロスレスストリーミング再生のサービスを始めたことが追い風になり、日本やアジアが中心だったハイレゾを聴く文化が、いよいよ欧米にも波及してメジャーな楽しみになりました。ハイレゾの認知はこれからも拡大すると見ています」(中村氏)ソニー独自のハイレゾに対応するBluetoothオーディオのコーデック技術である「LDAC」のライセンスを受けて、スマートフォンにオーディオプレーヤー、ワイヤレスヘッドホン・イヤホンなどのモバイルプロダクトや、オートモーティブのエンターテインメントシステムまで広くLDACを採用するパートナーが増えている。ウォークマンの “Signature Series” のようなレガシーの有線リスニングにも対応する高級機からBluetoothワイヤレスオーディオまで、今後も変わらず「ハイレゾに徹底注力」する考えを中村氏は明言した。■自ら考え、人に近づくイヤホン・ヘッドホンインタビューの最後に、これからモバイルプロダクト部門の責任者として中村氏がリーダーシップを採って実現したいことをうかがってみた。「LinkBudsを購入いただいた方々にはぜひ、思い思いに新しいワイヤレスイヤホンの楽しみ方を見つけてほしいと考えています。昨今のワイヤレスヘッドホン・イヤホンには最先端のPCやスマホに匹敵する高性能なシステムICチップが内蔵されていますので、今後はモバイルプロダクトにとって『できること』もますます高度化・多様化すると思います。少し先の未来には、ワイヤレスイヤホンにもモバイル通信機能が載ることも考えられるでしょう」「ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンが常時ネットワークにつながり、AIと連携しながら『考えるヘッドホン』になるというビジョンを、私もよく社内のメンバーと話をしています。様々な種類のセンサーがユーザーの行動を検知して、次にしたいことを先読みしながらサポートしたり、個人に合わせて最適な振る舞いをするーー。既に当社の1000Xシリーズをはじめ、最先端のモバイルプロダクトで一部実現している機能もありますが、今後もさらに踏み込んだ便利な機能を皆様にご提案したいと意気込んでいます」(中村氏)ユーザーが身体に装着して使う完全ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンは、ソニーの商品の中でも「最も、人に近づけるデバイス」なのかもしれない。今後も動向に注目したい。

山本 敦

最終更新:PHILE WEB