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ドローン関係の資格を取得したいと考えたとき、多くの方が候補にあげる『ドローン検定』。業界認知度が高く、全国で受験できるというのも人気のポイントでしょう。では、『ドローン検定』の資格を取得すると、どんなメリットがあるのでしょうか? 資格取得のメリットや、その背景に迫りました。
もくじ
近年、レジャーやビジネス、災害時の対策や復興支援にいたるまで、ドローンは私たちの生活にだんだんと浸透してきました。トイドローンやホビードロンであれば、1万円以下の手ごろな価格の機体が多く販売されていること、そして老若男女を問わずかんたんに操縦ができることも、ニーズの拡大を後押ししています。
しかし、気軽に触れられるからこそ、ドローンに関する事故が増えていることも事実です。
警視庁では、航空法違反の容疑で、8月末までに21件の違法飛行を摘発しました。摘発の背景はさまざまですが、「機体重量が200gを超えている」「飛行禁止区域でドローンを飛行させた」といった容疑が目立っています。
たとえば、5月26日に逮捕された男性の例をあげてみましょう。東京都江戸川区の公園で、夜間に許可なくドローンを飛ばしたことなどを受け、「航空法違反」と「偽造有印私文書行使」の疑いで、52歳の男性が逮捕されています。この一件が、「無許可飛行」容疑での逮捕として、都内における初めての事例となりました。
きっかけは、逮捕された男性のドローン飛行を目撃した通行人からの声です。「ドローンが急上昇と急下降をしており、危険を感じる」といった旨の通報を受け、警視庁葛西署が出動しました。男性は容疑を認めており、「公園のような広い場所であれば飛ばせると思った」と供述しています。
逮捕された男性がドローンを飛ばしていた場所は、航空法で飛行禁止区域(DID)に設定されています。また、ドローンを飛ばしていた時間帯は、午後9時55分から約20分間。航空法ではドローンの夜間飛行が規制されており、夜間に飛行させる場合には、申請が必要です。さらに、職務質問を受けた際には、飛行経路などの必要事項を記した書類に、本人ではなく弟の名前を記載したそう。加えて、ドローンの任意提出に応じなかったことから、証拠隠滅の可能性があるとして逮捕にいたりました。
このケースでは、「夜間に、飛行禁止区域(DID)で、ドローンを許可なく飛行させた」という複数の航空法違反があげられます。また、その要因として、男性がドローンの飛行ルールを正しく認識していなかったという問題も浮き彫りになりました。
確かに、ドローンを飛ばす際、使用する機体や飛行経路などの条件が航空法の範囲内であれば、申請は必要ありません。また、産業用ドローンやレース用ドローンではなく、一般的なトイドローンやホビードローンであれば、免許も必要ありません。
※ドローンの周波数は、大きく3種類に分かれています。一般的なコンシューマー向けホビードローンやトイドローンの周波数は「2.4GHz帯」。この周波数で、なおかつ技適マークのついたドローンであれば、免許は必要ありません。周波数「5.7GHz」の産業用ドローン、「5.8GHz」のレース用ドローンでは、無線免許が必要です。
▼無線免許に関する詳しい内容はコチラ
しかし、自分の使用する機体や飛行経路、飛行時の環境などが航空法の範囲内であることを証明するためには、ドローンに係る正しい知識が必要です。知識がなければ、前述のケースで逮捕された男性のように、自覚なく航空法を違反してしまうことだってありえるのです。
では、知識を得るためにはどうすればいいでしょうか。たとえば、国土交通省のホームページには、ドローンに関するさまざまな飛行ルールが記載されています。また、総務省のホームページには、国内でドローンを飛行させる際に基本となる技適マークに関する内容などが記載されています。あるいは、購入したドローン本体には、取扱説明書もついているでしょう。しかし、これらの情報は煩雑化しており、独学では見落としの危険性がないとは言い切れません。
そんなとき、ドローンに係る基礎的な知識を包括的に学び、客観的に知識を証明することのできる資格は、ドローンを安全に活用するうえで有効なツールとなります。
ドローン関連の知識を得られる資格には、『ドローン検定』『JUIDA』『DPA』『DJI JAPAN』の認定資格など、さまざまな種類があります。なかでも、業界内での資格認定者数がもっとも多いのがドローン検定です。
『ドローン検定』は、正式名称を『無人航空従事者試験』といいます。『ドローン検定』の目的は、ドローンを取り扱うパイロットの知識レベルを客観的に評価し、その資質向上および周囲の人々への理解を広めること。そして、『ドローン検定』受験を機に、すべてのドローンパイロットが正しい知識を身につけることを目指しています。
しかし、その背景には、ドローン事故などのニュースを受け、ドローンに対して世間の人々がネガティブなイメージを持っているという課題がありました。そこで、「ドローンを適切に普及していくためにはなにが必要か?」という協議を行ない、誕生したのが『ドローン検定』なのです。
ドローン業界において、抜群の認知度を誇る『ドローン検定』。全国各地で受験できるとあって、一度の検定につき1000人以上が受験しています。級ごとののべ認定数は以下のとおりで、3級がボリュームゾーンとなっているようです。下記は、2019年9月30日現在の、のべ合格者数です。
・1級:2,254人
・2級:4,108人
・3級:1万4,304人
・4級:764人
3級と4級には、受験資格がありません。しかし、2級の場合は、ドローン検定協会主催のドローン検定3級取得者、1級の場合は、ドローン検定協会主催のドローン検定2級取得者のみが対象となっています。「2級以上の資格を取得するために、まずは3級の資格取得を目指す」という方が多いのでしょう。
『ドローン検定』の受験料は、級数があがるごとにアップしていきます。
・1級:1万8,300円(受験資格:ドローン検定2級取得者のみ)
・2級:1万2,200円(受験資格:ドローン検定3級取得者のみ)
・3級:5,600円(受験資格:なし)
・4級:3,000円(受験資格:なし)
※消費税率の変更に伴い、2019年11月実施予定の試験より、受験料が一部改訂されています。過去の受験料をご記憶の方は、申し込みの際にお気を付けください。
『ドローン検定』の資格を取得すると、さまざまな場面でメリットが得られます。
たとえば、200g以上のドローンを使用したいときや、飛行禁止区域での飛行を計画しているとき。航空法の範囲外での飛行を行なう場合には、国土交通省への申請が必要になります。そんなとき、資格取得証明書を添付することで、ドローンに係る基礎的な知識が備わっていることを客観的に証明できます。
『ドローン検定』合格者は、ドローン検定協会における提携団体等の各種講習において、受講資格を得られます。提携団体は下記のとおりです。
・一般財団法人JAREX
・DPA
・JDA
『ドローン検定』合格者は、提携団体等の各種講習における座学や、国土交通省認定の『基礎技能講習』における座学が免除されます。
『基礎技能講習』とは、『ドローン検定』4級以上の合格者を対象に、ドローン操縦における基本的なルールや技術、安全に操縦するための技能などを身につけられる講習です。受講料は6万9800円。受講料には、テキスト代やライセンス発行代、機体レンタル代などが含まれます。
この講習で取得できる『基礎技能ライセンス』を手に入れると、国土交通省への許可申請時に必要な「飛行履歴10時間」が講習期間中の2日間で補完され、公式ログに登録されます。
『ドローン検定』のカリキュラムは、6つの大項目に分けられており、項目ごとにさまざまな小項目があります。
基礎知識……用語、動作、組織、制度・国際情勢、単位、三角関数
物理学……力学、熱力学、流体力学、電磁気学
工学……航空工学、材料工学、流体工学、電気電子工学、無線工学
気象……気象学基礎、航空気象学
専門知識……機体構造、姿勢制御、バッテリー、送信機、GNSS、リスク、責任・保険、飛行計画
法令……無人航空機関係、電波関連、刑事民事その他
これらは、受験する級数によって、試験範囲が異なります。いちばん級数の高い1級では、すべての項目が試験範囲に含まれるため、それだけ得られる知識も深みが増していくといえるでしょう。
★“全項目が試験範囲”と聞くと、つい身構えてしまいますよね。でも、3級、2級、1級と順を追って試験を受ければ、級数ごとに学んだ知識を無理なく活かしながら、資格取得ができます。1級合格のコツは、あまり間を空けすぎず、なるべく短期間でコンスタントに受験をすることです。
★『ドローン検定』の試験開催は、4級~2級までが1月・3月・5月・7月・9月・11月の奇数月開催。1級のみ、1月・5月・9月の年3回実施されています。
『ドローン検定』合格者は、合格した証である『ドローン検定』のロゴを名刺やホームページなどに記載できるため、ビジネスなどにおけるPRが可能です。1級合格者は、『ドローン検定』ホームページに名前と所属団体、コメントが記載されるため、よりPR度が高くなっています。
『ドローン検定』は、ドローン業界で認知度の高い資格です。また、あまりドローン関連の知識がない方であっても、『ドローン検定』というわかりやすいネーミングから、ドローンに係る一定の知識があることを示しやすくなっています。
『ドローン検定』合格者は、合格者のみが参加できるQ&Aコミュニティ『ドローン知恵袋』に参加できます。こちらは、『ドローン検定』のホームページ上で公開されており、資格を持っていない方でも閲覧だけなら可能です。
コミュニティには、実用的、専門的な質問とそれに伴う回答が数多く掲載されています。資格取得後も継続してドローンパイロット同士で交流でき、知識を深めたり疑問を解消できたりする、心強いコミュニティです。
『ドローン検定』合格者は、オンライン上で飛行経歴を管理できる飛行ログサービスを利用できます。許可承認申請時や、ドローンパイロットとしての経歴をアピールする際などに活用できます。
気軽に操縦できることが魅力のひとつでもあるドローン。産業用ドローンやレース用ドローンを使用しない限り、免許は必須ではありません。しかし、安全な飛行のために、適切な知識を身につけたいと考える方、ドローンをビジネスで活用していきたいと考える方にとって、『ドローン検定』をはじめとするドローン関連の資格は、心強い味方になってくれるのではないでしょうか。
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