グーグルから捜査当局に渡される位置...

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グーグルから捜査当局に渡される位置データが急増、「ジオフェンス令状」が人々のプライヴァシーを脅かしている

米国で捜査当局などの法執行機関が「ジオフェンス令状」に基づいて情報請求する件数が急増していることが、グーグルが公表したデータから明らかになった。ジオフェンス令状は犯罪捜査などのために発行されるもので、対象となる区域内に特定の時間に存在したすべてのデヴァイスからデータを収集する手法であり、批判の声も多い。

法執行機関はジオフェンス令状に基づく情報請求を2016年からグーグルに対して続けてきたが、その件数を同社は初めて明らかにした。グーグルのレポートによると、請求の件数は過去3年間に急増し、一部の州では10倍になっている。カリフォルニア州では18年の209件が20年に1,909件に増えた。フロリダ州では18年の81件から20年には800件超、オハイオ州では7件から400件になっている。

全米50州で見ると、ジオフェンス令状に基づくグーグルに対する請求の数は、18年の941件が20年には11,033件に達した。これは法執行機関からの同社に対するデータ開示請求全体の25%超を占める。

誰もが“巻き添え”になる可能性

ジオフェンス令状に基づく情報請求では、請求1件につき何百人もの無関係な人々のデータが含まれる可能性がある。19年に起きたある放火事件の捜査では、1件のジオフェンス令状のために1,500個近くのデヴァイスの識別子データが、米アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)に提出された。

グーグルから捜査当局に渡される位置データが急増、「ジオフェンス令状」が人々のプライヴァシーを脅かしている

多くの人権擁護団体やプライヴァシー保護活動家などはジオフェンス令状について、不当な捜査を禁じた合衆国憲法の修正第4条に違反するとして禁止するよう求めてきた。なかでも抗議運動の参加者を標的にした動きが懸念されている。こうしたなかグーグルが公開した情報により、全米の市民に対してどの程度の規模でこうした捜査がおこなわれているのかが明らかになったわけだ。

「巻き添えになる可能性は常にあります」と、非営利組織(NPO)の「政府監視プロジェクト」で憲法関連の事例を担当するジェイク・ラペルクは指摘する。ジオフェンス令状は基本的に対象となるエリアが広いことから、犯罪に関与していない個人の位置情報が警察の手に渡ることになるからだ。

これに対してグーグルは、「法執行機関の重要な任務に協力する一方で、ユーザーのプライヴァシーの保護に尽力しています」と説明している。「法的義務を遂行しながら開示するデータの範囲を減らすために、こうした要請に特化したプロセスを策定してきたのです」

関与していなくても「有罪の証拠」に?

こうしたなか、グーグルに対するある情報請求が8月下旬に『Forbes』で報じられた。ウィスコンシン州ケノーシャの警察が、昨年8月の特定の時間帯に地元の美術館と図書館の周囲にいた人のユーザーデータへのアクセスをグーグルに請求し、これをグーグルが認めたというのである。

これらの公共施設は、ジョージ・フロイドが警察官からの暴行によって死亡した事件を受けた抗議デモの際、放火の被害にあっている。美術館については2時間、図書館は25分の時間枠について、そこにいた人すべての「GPSの座標およびデータ、デヴァイスのデータ、デヴァイスID」とタイムスタンプを、グーグルは当局に提出したという。

ジョージ・フロイドの暴行死を巡っては抗議デモの開始から2日後に、ミネアポリスの警察がグーグルに対して同様のデータの提供を求めていたこともわかっている。警察は自動車部品チェーン「AutoZone」で発生した略奪事件に関して、「特定の区域内」にいた人すべてのデヴァイスデータを要求したという。