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建築基準法第12条第1項の規定に基づき、建築物の所有者は経年劣化などの状況を一級建築士などに調査させて特定行政庁※1に報告することが義務付けられています。また同法施行規則第5条およびこれに基づく平成20年国土交通省告示第282号(2008年)により、外壁については原則10年ごとにテストハンマーによる全面打診などによる調査が求められています。ただ全面打診による調査は仮設足場などを設置する必要があり、建築物所有者の費用負担が大きいという課題がありました。
これに対し、ドローンと赤外線装置を用いた外壁調査は仮設足場などが不要なため、調査期間の短縮やコスト削減効果が見込めます。また赤外線装置法による調査は、技術的な課題を克服できれば早期の社会実装を実現できるという期待が高まっていました。こうした中、国土交通省は2017年度および2018年度の「建築基準整備促進事業(T3)」の一環として赤外線装置を搭載したドローンによる診断方法(調査手順、安全確保技術など)を検討し、検出精度や飛行の安全・安定性といった複合的な影響による運用上の課題を示しました。
これを踏まえ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「規制の精緻化に向けたデジタル技術の開発/ドローン等を活用した建築物の外壁の定期調査に係る技術開発」に取り組んでおり、一般財団法人日本建築防災協会と一般社団法人日本建築ドローン協会、国立大学法人神戸大学、日本アビオニクス株式会社、株式会社コンステックはこのたび、ドローン飛行時における風などの外乱の影響下でも高い性能を維持する「小型赤外線装置」を開発するとともに、これを搭載して安全な外壁調査を実現する「近接調査用ドローンシステム」を開発しました。
このシステムは、ドローン飛行時においてGNSS※2の位置情報が安定しない場合シームレスにVisual SLAM※3へ自動で切り替わる機能を持つドローンと、物理的な安全飛行を可能とする2点係留装置※4で構成されます。実際に外壁の浮きやはく離を検出する精度を検証した結果、地上からの外壁調査診断で用いる一般的な赤外線装置(地上設置)と同等の性能を持つことを確認しました。
さらに同システムの社会実装を後押しするため、SLAM※5情報を利用した赤外線画像のポスト処理※6によってドローンによる診断の検出精度を向上する技術も開発しました。