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出典(Source):Pixabay、以下同じ
もくじ
「空の産業革命」と呼ばれ、注目を集めるドローン。人口減少と高齢化が進む日本ではあらゆる分野での効率化や省力化が不可欠であり、そのためのツールとしての「ドローン」はAIやIoT、ブロックチェーン、自動走行車などと並ぶ重要な役割を担うテクノロジーです。 現在でも、すでに写真や動画の空撮から工場やビル、太陽光パネル点検、そして工事現場における測量や田畑でのリモートセンシングなどでの利用が進んでおり、今後、オペレーター目視外での飛行や完全自動での飛行が認められるようになれば、さらなる活用が進むことは間違いありません。
ドローンと呼ばれる機体は、わずか数千円で購入できる「トイドローン」から200万円オーバーの産業用まで様々なグレードと価格の製品が存在します。ドローンメーカーの最大手DJIは、世界で70%超とも言われるマーケットシェアを持ち、衝突回避能力や静音性、ブレや揺れに高解像度のカメラ・システムなどを備えた優れた製品を世に送り出しています
しかし、こういった既成品には飽き足らず、あるいは必要に駆られてドローンを自作する人たちがいます。シンプルに「工作が好きだから、作ることが目的」というホビー志向の人から「レースで最速を極めたい」「200グラム未満の軽量な機体に良いカメラを積みたい」「特殊な用途に大型機体が必要だ」など、その目的は様々。この記事ではドローン自作、DIYドローンのメリットから費用、必要なキット、代表的なパーツや参考となる書籍や動画などの情報を紹介します。
初心者の方でも、この記事を一通りお読みいただけば「ドローン自作の概要がつかめる」ようになることを目指していますので、ぜひ、じっくりとご覧ください。そして、耳寄りなドローン自作情報やアドバイス、経験談をお持ちの中・上級者の方は、ぜひ『ビバ・ドローン!』のSNSアカウントにコメントをお寄せください。
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「なぜ、ドローンをつくるのか?」その答えは様々ですが、ドローン自作に取り組む人たちは以下のような動機や目的をもっていることが多いようです。
ドローン自作といっても、先に挙げた通りその目的は千差万別です。「インターネットの通販で購入した半完成品のキットを、組み立てて楽しむ」という趣味としての自作もありますし、「ベンチャー企業が資金調達をして、特殊機体の製造に挑む」という事業レベルの「自作」も存在します。その中でこの記事では、初心者・入門者向けのドローン自作情報をメインに扱う予定ですので、自作上級者用のドローンや産業用機体などについての記載はありません。
パーツを別々に買い集めるのではなく、必要な「キットセット」を、購入する場合はだいたい10,000円前後です。これに、受信機(5,000円前後)、バッテリー(3,000円前後)やケーブル、結束バンド、六角レンチなどの工具などの数千円を買い足せばOKです。また、操縦には追加で5,000円〜30,000円程度のプロポ(コントローラー)が必要になります。こういった価格を踏まえると「セットキットを買ってドローンを自作した場合の価格(総額)は25,000円程度がひとつの目安」となりそうです。
なお、組み立てや設定の不備で部品を割ってしまったり基盤を焼いてしまったりした場合は「買い直し」が必要になり、初心者の場合は実際にそうなるケースも少なくないので予備部品を買う金額も先に予算として考えておくほうが無難と言えそうです。
初心者がドローンを自作しようとした場合でも、その費用は完成品を購入するより割高になる場合がほとんど。シンプルなトイドローンであれば、Amazonなどのネット通販で5,000円前後から購入できるので、最安値でドローンを手に入れる場合はこちらが最有力候補です。
Amazonで購入できる完成品の格安ドローンの例
一方で、市販品にもDJI製『Mavic 2 Pro』など10万円超えのドローンが存在するので、「それなら、自作した方が安いよね……?」と思われるかもしれません。しかし『Mavic 2 Pro』のように「折りたたみが可能で小型軽量、4Kカメラと精密ジンバルを備え、自動で衝突回避をしたり被写体追尾をできる」という機能を備えた機体を自作することはほぼ不可能で、仮にできたとしても同等の値段におさえることはできません。そのため「単に安いドローンが欲しい」「コスパが高いドローンが欲しい」という場合は、自作よりも市販の機体を購入する方がおすすめです。
ただし、自作ドローンのサークルなどに入っている場合に、他の人から「不要になったパーツを分けてもらったり、格安で譲ってもらえる」ということもあるため、その場合は無料、もしくは安価に部品が手に入ります。そういった場合は、自作ドローンはコスト面で市販品にくらべて優位になると言えるでしょう。
なお、「セットキット」ではなく「パーツをバラ」で購入する場合でも価格は大きく変わらず、改造や仕様の変更やグレードアップの際に必要な物だけを買えば良いというのがメリットです。あくまで、機体をまるごと買い替えなくても良いという点がバラ売りパーツの魅力であって、「バラで買えば格安」というわけではありません。
自作ドローン用のセットキットは、完成品ドローンにくらべてニッチな市場であるため商品数はそれほど多くありません。
記事作成時点にAmazonで見つかった主なキットは以下の通りです。
価格:10,800円(記事作成時点、税・送料込み)
ドローンを自作するのに必要な主なパーツはフレーム、フライトコントローラー、モーター&スピードコントローラー、ローター(プロペラ)、バッテリー、受信機です。また、用途によってGPSユニットやカメラを追加される場合もあります。なお、操作には別途プロポ(コントローラー)が必要で、ドローンに取り付けられたカメラがとらえた映像を見ながら飛行する「FPV」スタイルを楽しみたい場合は、さらに追加でトランスミッターとFPVゴーグルが要ります。なお、分電盤やケーブル、結束バンド、工具などについてはこの記事では紹介を割愛しています。
フレームはドローンの骨格にあたる部品です。この部品の上に、フライトコントローラーやモーターバッテリーなどを載せプロペラを取り付けることで、ドローンができあがります。サイズや形状にはさまざまなバリエーションがあるので、用途や好みでチョイスしましょう。
LHI H180/H210 4軸 180/210 Mini FPVクワッドローターフレームキット (炭素繊維製) (H180)
価格: 2,200円(記事作成時点、税・送料込み)
※この記事で紹介しているのは各パーツの例であり、上から順に購入すれば1台のドローンができるというわけではありませんのでご注意ください。
ドローンの制御全般を司(つかさど)る「頭脳」にあたる部品がフライトコントローラーです。シンプルなものでは姿勢制御や高度維持を行なうだけの物から、高度なものでは指定されたルートに沿って飛ぶ、リターン・トゥ・ホーム(離陸場所に自動で戻る)、といった機能を備えるものもあります。
価格:2,600円(記事作成時点、税・送料込み)
フレームとローターの間に設置され、回転することで揚力を生み出すパーツです。車にとってのエンジンと同様にドローンの飛行速度や離陸可能重量を決める重要なパーツです。
価格:6,999円(記事作成時点、税・送料込み)
高速で回転することで揚力を生み出すパーツです。装着が甘いとはずれてしまったり、衝突や着陸の失敗の際に折れることがあるので、予備を購入しておくのがおすすめです。
価格:599円(記事作成時点、税・送料込み)
フライトコントローラーやモーターに
価格:2,880円(記事作成時点、税・送料込み)
プロポ(コントローラー)が発した電波をチャッチして、操縦者の指示をフライトコントローラーに伝達するための部品です。
価格:7,182円(記事作成時点、税・送料込み)
ドローンを操縦するためのコントローラーです。他の部品に比べて値段が張りますが、操作性にダイレクトに影響する部分だけに重要です。フタバのプロポは、ドローンレーサーを含め愛用者が多く、汎用性も高いのでおすすめです。
価格:28,700 円(記事作成時点、税・送料込み)
ドローン自作用のパーツを購入したいという場合に利用できるお店(ネットショッピング)をピックアップしました。
» HOBBYNET JAPAN» GOLD STONE PRODUCTS» エアクラフト» ORI RC» おと×ラジ通販» GOOD FPV
» Hobbypower (ホビーパワー)» ARRIS(アリス)
この他にもおすすめのサイトをご存知の方は、ぜひ「ビバ! ドローン公式ツイッター」までお知らせくささい。また、ショップ様からのご連絡も大歓迎です!
FPV(一人称視点)ゴーグルを装着してレースに参加する場合は「目視外飛行」となり、事前に国土交通省への申請を行ない承認を受ける必要があります。
» 参考: 航空:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール – 国土交通省
なお、ゴーグルなどを装着せず、全コース内で飛行するドローンを目視できる場合は、当然ながら「目視外飛行」の申請は不要です。
ドローンを遠隔操作したり、映像をFPVゴーグルへ伝送するためには通常電波を使用します。この電波は、限られた周波数帯を効率的に利用し混線などを防ぐため、法律で利用が制限されている場合があります。一方で、すでに技適を取得した製品のWiFiなどであれば、使用者が免許を取得したり申請をする必要はありません。
一般的なスマホのアプリからWiFiやBluetoothといった電波を使用してドローンを操縦する場合は、免許などは不要です。詳細は電波法を管轄する総務省のホームページに以下の通り記載がありますので、ご確認ください。
なお、ドローンが「技適」を通過したものかどうかはこちらのページから調べられます。
»参考: 技術基準適合証明等を受けた機器の検索
FPV(一人称視点)ゴーグルを装着してドローンを操縦するための映像伝送用として5GHz帯の電波を利用する場合はオペレーターが「第四級アマチュア無線技士」資格を取得する必要があります。
» 参考:日本無線協会|公益財団法人
加えて、実際に使用するドローンに対して「無線局開局」の申請をし、承認を受ける必要もあります。技適認証済でないパーツ(改造用部品や海外から仕入れた部品)を使用する場合は、この際に追加の書類を提出することで使用が可能になります。
» 参考:無線局開局の手続き・検査
なお、アマチュア無線と無線局開局が必要な場合の概要については、総務省のホームページに以下の通り記載がありますので、ご確認ください。
ドローンプログラミングの初歩的なものとしては完成品のドローンの挙動をGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)を使って簡易的にプログラミングできる『Airblock』や『DRONE STAR プログラミング』などがあり、より専門的なものとしてはドローンメーカーの最大手DJIが提供するSDKなど、ドローンに関連したプログラミングには様々な種類やレベルのものが存在します。
オープンソースで開発されているマイコン基板『Arduino(アルディーノ)』をプログラミングしてドローンを飛行させることも可能です。ただし、制作には相当の知識と時間が必要とされることから、ドローン自作やプログラミングの腕に覚えがある人向けの内容です。以下の記事では、実際に「アルディーノ・ドローン」とも言うべき機体を自作した一部始終が紹介されているので、要チェックです。
» Arduinoでドローンの自作|製作記録 – 自作のいろいろ
ドローンを作って、飛ばすまでの知識が体系的にまとめられた1冊。2017年半ばに出版された第2版のため、印刷物としては比較的新しく、おすすでめす。
フレームに各部品を装着して、フライトコントローラーを設定する直前までを丁寧に解説した動画です。
細かい解説はありませんが、タイムラプス(コマ撮り早回し)動画で、組み立てから設定までが一気に見られる動画です。
レースで最速を狙うもよし、工作を楽しむもより。既成品にはない自由さと、試行錯誤のプロセスを楽しみたい方は、ぜひ、ドローン自作にチャレンジして