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Pixel 6(左)とPixel 6 Pro(右)
今回登場したPixel 6とPixel 6 Proの2モデル。デザインが共通しているため、見た目では選びづらいのですが、最大の違いはディスプレイサイズの差による本体の大きさの違いです。
Pixel 6 Proは6.7インチQHD+(1,440×3,120)のLTPO OLEDディスプレイを採用。最大120Hzのリフレッシュレートをサポートし、HDR表示にも対応します。本体サイズはH163.8×W75.9×D8.9mm、210gです。
過去のPixelシリーズでもっとも画面が大きかったのはPixel 4 XLで、画面サイズが6.3インチ。そして本体サイズと重さはH160.4×W75.1×D8.2mm、193gでした。それと比較すればPixel 6 Proのほうが大きく重いことにはなりますが、画面サイズが6.7インチと大きくなっていることを考えれば健闘といえます。Pixel 4 XLと違い、パンチホール型のインカメラを採用して全面ディスプレイになったのが、本体の大型化を抑えつつ画面サイズを大きくできた一因でしょう。
従来モデルではフラットだったディスプレイが側面までカーブしており、より一層全画面という印象を与えます。4K HDRに対応するため、大画面と合わせてコンテンツの視聴体験は向上しています。
ディスプレイのリフレッシュレートは10~120Hzの可変式。Pixel 6やPixel 5では90Hzなので、より高速動作が必要なゲームアプリなどでは威力を発揮しそうです。縦長のWebサイトを素早くスクロールさせた場合も、120Hzだと表示のブレが少なくて内容が確認しやすく感じます。
それに対してPixel 6は画面サイズが6.4インチ。解像度はFHD+(2,400×1,080)のOLEDで、アスペクト比は20:9(Pixel 6 Proのアスペクト比は19.5:9とわずかに縦が短くなっています)。リフレッシュレートは最大90Hzなので、その点もPixel 6 Proとの違いになります。
ディスプレイの輝度やコントラスト比、HDRサポートなどは変わりません。エッジディスプレイのPixel 6 Proとは異なり、Pixel 6はフラットディスプレイであるというのも大きな違いで、全画面表示の感覚は薄いのですが、手に持って操作するときに意図しない誤タッチが発生しやすいのはエッジディスプレイの方で、どちらかというとシンプルに使いたい人はフラットディスプレイの方が向いています。
個人的には好き好きだとは思いますが、リフレッシュレートを含めてゲームをするならPixel 6 Pro、そうでないならPixel 6でも十分でしょう。
Pixel 6の本体サイズはH158.6×W74.8×D8.9mm、207g。高さで5mmほど、幅で1mmほど、重さで3gほど、小さく軽くなっています。高さ以外は、正直あまり大きな差は感じません。逆に言えば、ディスプレイが小さいにもかかわらずサイズに大きな差がないという点が少し気に掛かります。もう少し大きく画面サイズを変えて、バリエーションをつけても良かったように感じます。
ハードウェア面では搭載メモリ容量が異なり、Pixel 6 Proは12GB、Pixel 6は8GBとなっています。この点からも、ゲームや動画編集といった大規模なメモリが必要な用途ではPixel 6 Proを選ぶ方がいいでしょう。とはいえPixel 6でもスペックとしては十分なので、利用してストレスを感じることはなさそうです。
無線周りにも違いがあります。
共通しているのは、Wi-Fi 6Eをサポートし、6GHz帯にも対応している点。現時点で日本では使えない帯域ですが、今後利用可能になれば大幅な性能向上が見込めます。もちろん、5GHz帯のWi-Fi 6は使えるので、十分高速です。
異なるのはまず、Pixel 6 ProがUWBを搭載している点です。これは距離測定と空間定位に利用される……といわれていますが、現時点ではアクティブ化されていないようです。
そして最大の違いが5Gのミリ波サポートの有無。Pixel 6 Proは5GのSub 6とミリ波をサポートし、NTTドコモのn79を除けば多くのバンドに対応しているので、ドコモ以外のキャリアであれば快適に利用できるでしょう。Pixel 6はミリ波は非対応ですが、Sub 6に関しては同様に広いバンドをサポート。Androidスマートフォンとしては破格の対応バンドの広さです。どちらも、nanoSIMとeSIMのデュアルSIMであるのもポイントが高い点です。
Pixel 6 Proは「全部入り」ですが、現時点でミリ波の対応エリアが狭い点、UWBの利用が制限されている点も考えると、Pixel 6 Proを選ぶ理由としては弱いかもしれません。
Pixel 6/Pixel 6 Proの違いで、個人的に最も悩ましいのがカメラ機能の違いです。Pixel 6シリーズは独特の「カメラバー」デザインによって、どちらもデザイン的な違いはありませんが、カメラとしてはPixel 6がデュアルカメラ、Pixel 6 Proがトリプルカメラとなっています。
どちらもメインカメラとして5,000万画素の広角カメラを搭載。センサーサイズは1/1.31インチで、ピクセルピッチは1.2μm、レンズの絞りはF1.85、画角は82度、Exif表記の35mm判換算の焦点距離は24mmとなっています。高画素を生かして、4つのピクセルを1つのピクセルとして扱うピクセルビニングが前提で、撮影される画像は1,250万画素になります。
超広角カメラも共通で、1,200万画素センサーを採用。ピクセルピッチは1.25μm、レンズの絞り値はF2.2、画角は114度。Exifには16mmの焦点距離となっています。
Pixel 6 Proのみ搭載の望遠カメラは、限られたスペースに埋め込むために屈曲光学系を採用しており、光学倍率は4倍。センサーの画素数は4,800万画素で、ピクセルビニングにより1,200万画素で記録されます。センサーサイズは1/2インチ、ピクセルピッチは0.8μm、レンズの絞りはF3.5、画角は23.5度です。Exifだと焦点距離は104mm。つまり、正確には約4.3倍ということのようです。
カメラ機能は、コンピュテーショナルフォトグラフィーを駆使したPixelの重要機能です。とにかく、簡単に美しい写真が撮れるというのが売りですが、今回は新たに搭載されたAI機能が抜群に優れています。このAI機能は全てPixel 6/Pixel 6 Pro共通ですので、どちらを選んでも利用できます。
1つめの機能は「消しゴムマジック」。正確にはフォトアプリの機能ですが、撮影した画像内に写っている人を認識し、消去してしまうという機能です。Adobe Photoshopに「コンテンツに応じた塗りつぶし」という機能がありますが、内容としては同じものです。
面白いのは、撮影した画像内の人を自動的に判別してくれる点です。顔検出などで主要被写体として認識された人物は消去対象にならず、風景写真に写り込んだ無関係の人、ポートレートの背後に歩いていた人など、ピント外の人間はなかなかの精度で検出してくれます。
使い方は、撮影画像をフォトアプリで開き、「ツール」から「消しゴムマジック」を選択するだけです。特に編集画面の「候補」に消しゴムマジックが表示されている場合、Pixelは画像内に消去できる人を発見しているため、選択すればすぐに消去する対象がハイライトした形で表示されます。すごいのは、顔だけでなく人の体もきちんと認識してくれる点です。
あとは、個別にタッチして消していくか、「全てを消去」を選んで一度に消去します。あくまで結果としては「コンテンツに応じた塗りつぶし」と同じで、周囲の部分で置き換えていく形なので、消した後が不自然になることもあります。ただ、背景が空や草むらのように同じ色や形が連続した場所だと、一見すると見分けが付かないほどきれいに消してくれます。
人を認識しなかったり、人以外を消したい場合は、画像の消したい場所を丸で囲めば、その範囲をコンテンツに応じた塗りつぶしで消してくれます。
撮影時に使う機能としては「モーションモード」があります。これは、流し撮りと長時間露光を疑似的に再現してくれる機能です。アクションパンは、背景が流れるような流し撮りを再現してくれます。カメラを固定しても、被写体を追うように撮影しても、効果が得られます。
長時間露光は、走行する車のテールランプが流れる川のようになる効果を得られます。連写合成に加えてデジタル処理を行うことで実現しているのですが、いずれも本来難しい撮影にもかかわらず、これを手持ちで簡単に実現できてしまうのが面白いところです。
長時間露光は、シーンによって撮影時間が異なるのですが、普通に構えていれば手ブレすることはありません。夜景モードのように暗所で明るく撮影できるわけではないのである程度の光量は必要ですが、交通量の多い夜の道路を撮影すると面白い効果が得られます。
長時間露光を応用すると、前述の消しゴムマジックのような効果も得られます。これは複数の写真を合成しているため、撮影の間に動いている物体があると、その物体は画像に残らなくなるのです。つまり、行き交う人々を撮影すると、その人々が写真からは消えてしまうというわけです。
アクションパンと長時間露光は、要は「背景をブレさせたいか」「被写体をブレさせたいか」という違いになります。こうした撮影は実際のカメラでも使われるテクニックですが、それが手持ちでできてしまうのが強力です。
カメラ自体は、シンプルで扱いやすいカメラです。撮影後に画像を開くと1~2秒ほど画像の処理時間が入るように、AIによる様々な後処理が行われているようです。特に色味はかなり派手な補正を行っているので、シーンによっては少しやりすぎという印象を受けることもあります。とはいえ、肌の色を問わずに正確な肌の色味を再現するというリアルトーンを搭載しているため、人の肌はあまり不自然な描写にはならないようです。
HDR機能も強力で暗部も明るくなって見た目に近い描写になりますが、従来通り明部と暗部の露出を個別に設定することが可能なので、カメラ任せではないこだわった写真も取りやすいのが嬉しいところです。新たに、ホワイトバランスの設定も可能になって、さらに使い勝手が向上しました。
こうした撮影機能はPixel 6/Pixel 6 Proで共通していますが、前述の通りPixel 6 Proには望遠カメラを搭載しています。それほど近接撮影性能は高くないので、グッと被写体に近寄れるわけではありませんが、デジタルズームと比較すればはるかに画質が高く、使い勝手の良いレンズになっています。
デジタルズームでは20倍までの超解像ズームもサポートしています。望遠カメラのないPixel 6は7倍まででなので、その使い勝手の差は歴然。20倍までくると決して高画質とは言えませんが、望遠カメラにとってはデジタル5倍ズームなので極端に無理をしているわけではなく、被写体が判別できるレベルにはなっています。
ちなみに、RAW画像で確認してみると、望遠カメラから中央を切り抜いた画像(680×512ピクセル)が残されていました。どうやら後処理でこれを12.5MPまで拡大しているようです
手ブレもよく抑えられ、幅広いシーンで満足いく写真が撮れるでしょう。それに加えて、他にはないAIを活用した機能が面白く、遊び心も満足させてくれるカメラです。その意味では、やはり望遠カメラを備えたPixel 6 Proを選択したくなります。カメラ機能を重視するならPixel 6 Pro……と言いたいところですが、画質面では同等のようで、AI機能も変わらないため、Pixel 6を選んだとしても十分楽しめそうです。
Pixel 6/Pixel 6 Proの違いとしては、ここまで解説してきた点のほかにバッテリー容量もありますが、公称のバッテリー駆動時間はどちらも24時間以上と変わりません。画面サイズや解像度が大きくなる分、消費電力は増えるので、その差があるのかもしれません。そのため、実質的には同等と考えていいでしょう。
けっきょくのところ、2モデルの差はミリ波とUWBというワイヤレス機能とディスプレイの大きさ・解像度・リフレッシュレート、本体サイズ、そして望遠カメラの有無、ということになります。
逆に言えばそこまで大きな差がないので、「どちらを選んでもいい」といっても良さそうです。今のAndroidで望まれるほとんどの機能を網羅した「全部入り」といってもいい、Googleの純正ハイエンドスマートフォン。価格もPixel 6で74,800円、Pixel 6 Proで11万6,600円と、他社製品と比べても高すぎると言うことはないので、お勧め度の高い製品だと感じました。