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7月から徐々に情報が出てきた新興デジタル製品ブランド Nothing のワイヤレスイヤホン「ear (1)」のサンプルを入手したのでレビューをお届けします。
Nothing は、中国スマホ大手 OPPO 傘下の「OnePlus(一加)」共同創業者、Carl Pei が立ち上げた新興テクノロジー企業。ear (1)はそのコンセプトを世に問う最初の製品という事になります。すでに写真等でご覧になっている方も多いと思いますが、透明パーツを多用したデザインは、創業パートナーである Teenage Engineering が手掛けます。Teenage Engineering といえば「世界でいちばん、楽しいシンセ」ことOP-1の開発でも知られています。
さてそんなear (1)ですが、価格が99ドル / 1万2650円で8月17日より発売が開始されます。今回は一足早いレビューをお送りします。
Nothing ear (1) at Amazon
■かっこいいだけじゃなかった
パッケージはシンプルですが、全面に渡って特徴的なドットフォントが使われており、中の説明書や本体の製品名などあらゆる部分で統一されています。さらに設定用の専用アプリに至るまで同一フォントが使われており、さすがTeenage Engineeringの仕事です。
まずケースの設計からしてユニークです。一般にこうしたスティック型イヤホンでは、スティック部を差し込むような格好のケースが一般的ですが、ear (1)の場合はイヤホンを斜めに寝かせる格好で収納します。
スティック部の裏面に接点があり、ケース部の接点とくっつけることで充電やペアリングを実現します。スティック部が動かないように、ケースのフタ部分を丸く凹ませているあたりは、デザインと機能をうまく両立させています。
イヤホン本体を見てみましょう。エンクロージャ部はホワイトとブラックのツートーンですが、スティック部には透明なアクリル素材を使用しており、中の基盤が確認できます。表面はタッチセンサーになっており、赤白のポッチ部分下と、スティック部に2つのセンサーが見えます。
ポッチ部のセンサーは、ダブルタップで再生/停止、トリプルタップで次の曲へスキップ、長押しでノイズキャンセリングモード切り替えです。スティック部は上になぞるとボリュームアップ、下になぞるとボリュームダウンです。
ノイズキャンセリング用マイクは3つ。赤白ポッチの横、エンクロージャ部後部、イヤーチップ付近の3箇所です。なおスティック部先端にあるマイクは、通話用です。
イヤーチップは3サイズが付属します。こちらも楕円形チップを採用と、99ドルでありながら、できることは全部やってる感がハンパないです。標準ではMが装着されています。
装着状態は耳型で確認いただきますが、11.6mmのダイナミックドライバを採用している割にはエンクロージャ部がコンパクトなので、装着感は非常にライトです。先日、フィット感の良さを追求したJBL 「LIVE PRO+ TWS」というモデルが登場しましたが、個人的にはそれに準ずる快適さかと思います。
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■ノイキャン・音質ともにハイレベル
では早速音を聴いてみます。本機はFast Pairing対応ですので、Androidでは何もしなくても自分からペアリングしてきます。
ノイズキャンセリングは、ON・OFF・外音取り込みの3モード。この3つは本体の長押しでも切り替えられます。ノイズキャンセリングはLightとMaximumの2タイプがありますが、これはアプリ上でのみ切り替えが可能です。
Lightは効きがソフトで、比較的静かな場所でエアコンの音が気になるとか、そういった場合に使えるでしょう。Maximumは全力でキャンセリングします。低音・風音のようなノイズは低減しますが、人の声はまあまあ漏れ聴こえます。ただ音楽のボリュームを上げてしまうとマスキングされますので、気にならなくなります。
イコライザは、標準状態がBlancedで、そのほかプリセットが3つあります。自分でカスタマイズする機能はありません。
ほとんどの場合、Balancedで十分な音質です。コーデックはSBCとAACのみですが、最近はみんな音作りが上手くなりましたね。変な癖もなく、素直な音質ですが、若干ウェットな、落ち着いた感じのサウンドです。見た目と合わせると、もう少し華やかさがあると良かった気がしますが、その場合はプリセットの「More Treble」に切り替えるといいでしょう。一皮剥けたような、ブライトなサウンドになります。
「More Bass」では中高域はそのままに、低音だけドコッとした表現になります。ちょっと集中したい時なんかに使うと気持ちいいと思います。「Voice」は通話やポッドキャストを聞く際に使うモードで、音楽鑑賞には向きません。EQの設定でかなり表情が変わるイヤホンと言えるでしょう。
■問題提起するイヤホン
本格的なノイズキャンセリングを搭載し、音質的にも安心して勧められる本機ですが、基盤設計や組み立てなどに非常にコストがかかる透明ボディにも関わらず、99ドルで売ってしまう事に驚きを隠せません。クラファンの先行販売ではなく、普通の定価です。この機能とデザインであれば、200ドルぐらいでもまずまず行けたのではないかというのが筆者の見立てです。
逆にいえば、今100〜200ドルの範囲のワイヤレスイヤホンは、どこにコストかかってんの? という話になります。Nothingにできて他社ができないのは、なぜなのか。音質に拘っている、ブランド、色々理由はあると思います。しかしear (1)の登場で、99ドルでデザインやモノとしての質感も含め、ここまでできるということがわかってしまいました。
99ドル以下というところで勝負できるイヤホンもあると思いますが、今後の完全ワイヤレスイヤホンはよほど尖ったスペックでないかぎり、なぜその値段なのかは厳しく問われる事になりそうです。
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