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今や多くの人が利用している完全ワイヤレスイヤホンは、ここ数年でどんどん低価格/高性能化が進み、1万円前後の価格帯で各メーカーがしのぎを削るボリュームゾーンになっています。
そんな中、グーグルが新たに発売を開始した「Pixel Buds A-Series」は、公式HPで1万1900円と比較的手に取りやすい価格ながら、グーグルならではの操作性/接続性を備えた製品になっています。
先に紹介した通り、「Pixel Buds A-Series」は公式HPで1万1900円。2020年に発売された、「Pixel Buds」はおよそ2万円での発売だったため、半額近く安くなって登場した形になっています。
というのも、グーグルのスマートフォンである「Pixel」シリーズには、廉価モデルの「Pixel a」シリーズが存在し、今回「Pixel Buds」でも“A”を冠した廉価モデルとして発売されたと考えられます。
ただし、執筆時点(2021年9月上旬)でグーグルの公式HPを確認すると「Pixel Buds」は販売を終了しているため、現在購入できるのは「Pixel Buds A-Series」のみ。グーグルのイヤホンシリーズとしては“後続機”としても捉えることができるでしょう。
廉価版モデルということもあり、「Pixel Buds A-Series」は「Pixel Buds」と比べると機能的に削られた部分もありますが、音質や操作性などしっかりと踏襲されている部分もあります。では、具体的に「Pixel Buds A-Series」を試していきましょう。
「Pixel Buds A-Series」はカナル型の完全ワイヤレスイヤホン。本体サイズは約20.7mm×29.3mm×17.5mm、質量は片耳約5.06gとなっており、比較的コンパクトな設計になっています。
イヤホン本体には「固定用アーチ」がついており、耳の穴をしっかりとホールドすることで装着感はかなり良好。圧迫感があるほどではないながら、耳から落ちる心配はあまりないので、運動時に着用しても良いでしょう。本体は防滴設計になっているので、汗や雨による故障の心配が少ないのも特徴です。
本体側面はタッチセンサーになっており、再生や一時停止、曲送りといった操作を行うことができます。「Pixel Buds」に搭載されていたセンサーによる音量調節機能は省略されましたが、廉価版モデルと考えれば妥協するべきポイントでしょう。
バッテリーはイヤホン単体で最長5時間の音楽再生、最長2.5時間の通話が可能となっており、充電ケース併用時は最長24時間の音楽再生、最長12時間の通話が可能です。
イヤホンを充電ケースに入れて充電すると 15分で最長3時間の音楽再生が可能となる急速充電に対応。30分ほど充電すればフル充電になる計算と考えると、充電速度はかなり早い印象です。
グーグルのイヤホンということもあり、やはりAndroidスマートフォンと接続して使用するのがおすすめ。「Pixel Buds A-Series」の充電ケース背面にあるボタンを長押しした後に蓋を開くとペアリングモードに移行し、近くにあるAndroidスマートフォンにポップアップが表示され、簡単に接続することができます。
また、「Google Pixel Buds」アプリを使用すると、タップ操作のオン/オフや、イヤホンを取り外すことで自動的に音楽の再生を停止する「装着検知」機能のオン/オフといった切り替えができます。
本製品はもちろんiPhoneと接続することも可能ですが、iOS版の「Google Pixel Buds」アプリは執筆時点ではないようです。一般的なワイヤレスイヤホンとしての利用はできますが、細かい設定は行えないので、やはりAndroidスマートフォンと接続するのがおすすめでしょう。
内蔵されているドライバーは12mmと大型で、音質としては中高音域の“キビキビ”とした切れの良さが目立つ印象です。専用アプリから設定できる「バスブースト」機能をオンにするとドラムやベースの響きが増し、より音の厚みが表現できるので、音楽のジャンルなどに合わせて使用すると良いでしょう。
特に印象的な機能が「アダプティブサウンド」というもので、これをオンにすると周囲の環境に合わせて音量を自動的に調整してくれます。自宅で映画鑑賞などに用いる際には耳にしっかり届く程度、電車内など周囲の音が気になる環境では音量を上げるといった調整を勝手に行ってくれるため、毎回スマートフォンを使って設定するわずらわしさがありません。
環境音の調節という観点でいえば、近年は周囲の音を遮断する「ノイズキャンセリング」機能を搭載したイヤホンも多く登場していますが、専用のチップを搭載したりとコストがかかる上、コンパクトな筐体のわずかなスペースをチップに割いてしまうのも事実。
「Pixel Buds A-Series」は、代わりにアダプティブサウンド機能を搭載することで、価格を抑えながら12mmの大口径ドライバーを搭載するスペースを確保したとも考えられるでしょう。
1万1900円ながら安定した装着感や12mm大口径ドライバーから再生される精巧な音質など、魅力満載の「Pixel Buds A-Series」。やはり大きな特徴は「アダプティブサウンド」機能やAndroidスマートフォンとの接続性にあり、ソフトウエアの仕上がりには“さすがグーグル”とも思わされます。
スマートフォンのPixelシリーズにおいてはハイエンドラインと廉価版の“aシリーズ”が毎年更新されている点や、2020年発売の「Pixel Buds」が終売になっていることを踏まえると、今後新たに“機能全部乗せ”のようなハイエンド完全ワイヤレスイヤホンがグーグルから登場する可能性も否めませんが、本製品も完成度は高く使用感において不満は感じられないので、Androidスマートフォンユーザーのファーストチョイスになり得る製品でしょう。
取材・文/佐藤文彦