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歩行速ロボットの運行管理者を育成する「ロボットオペレータースクール」が2021年12月、岡山県倉敷市真備町地区に開校した。モトヤグループの「日本交通教育サービス(JTES)」が運営。同社によるとロボの遠隔監視オペレーターを育成するスクールは日本初という。同社は「人口減少時代の日本にロボは必要不可欠な存在。人とロボが共生する社会の発展に貢献したい」としている。
自動走行するロボを監視するオペレーター=2月上旬、岡山県倉敷市真備町のロボットオペレータースクール真備町地区にあるロボスクールのテストコース。人を乗せて滑らかに走行しながら「道を開けてください」「ありがとうございます」などと話すのは人の歩く程度の速さで歩くロボ、歩行速モビリティー「ラクロ」(最高時速6km)だ。
ラクロはオペレーターが行き先を決めさえすれば、段差や坂道、信号、周囲の人といった状況を自律的に判断し、乗客を運ぶことができる。オペレーターはロボに備え付けられたカメラやセンサーを通じ手元の端末で周辺環境を確認できるため、ロボのそばにいる必要はない。
ロボを遠隔監視するオペレーター。モニターには周囲の情報が表示されるラクロはロボ製造を手掛けるZMP(東京)が開発。空港や大規模ショッピングセンター、観光地、高齢者の移動支援などで活躍が期待されている。また、道路交通法では電動車いすとして分類されるため、公道(歩道)上の走行もできる。
スクールでは、ラクロの他、ほぼ同サイズの歩行速の無人宅配ロボ「デリロ」も導入。操作を学ぶことができる。
スクールは21年12月、JTESが真備町地区で運営している「ドローンビジネスラボラトリー倉敷真備校」内に整備。同社はこれまで、企業・行政向けの安全運転研修やコンサルティングを手掛けてきた実績がある。
ロボオペレーター養成の研修は3日間。座学と実技の研修を通じ、運行管理に必要な知識や、遠隔監視する自動運転ロボットの走行にあたって発生するリスク管理手法などを学ぶ。
座学研修では、自動運転ロボを活用した事業実施にあたって、道路交通法や道路運送車両法などの法規制や、運用計画作成についての走行ルートや故障対応などの注意事項についての知識を得る。
実技研修では、スクール内のテストコースをラクロやデリロに実際に走行させ、モニターを見ながら運行・管理する遠隔監視の技術を習得する。
JTESの青山知之社長は「ロボの開発はメーカーが行うが、事業の実施で考慮すべきリスクや関係する法律などを教育するノウハウがあるのが私たちの強み」と話す。
ロボによる人の移動や輸送への期待は広がる。JTESは21年11月、真備町地区で高齢者がラクロに乗り買い物に出掛ける実証実験を行った。
また、オンラインショッピングの利用増もあり、宅配業界は慢性的な人手不足が続く。宅配ロボには、流通サービスなどを手掛ける企業からの関心が高い。石油大手のENEOSは今月、東京でデリロを活用し、遠隔監視によるデリバリー事業の実証実験を実施。ファミリーレストランなどと連携し、エリア内のマンションに商品を届ける。
JTESの青山社長は「高齢化の進む地域では人を乗せて移動でき、買い物支援などができるラクロの人気が高まりそう。一方で人口の多い都市部ではデリロのような無人宅配ロボに対する需要が大きくなるのでは。ロボを生かした事業が増えれば、それだけ運行管理するオペレーターが必要になる」とスクールの成長に期待する。
真備町地区は18年7月の西日本豪雨の被災地。そんな被災地での開校について青山社長は「豪雨以降、地域から人口が流出している。新しいビジネスを始め、地域のみなさんが元気になるニュースをお届けしたい。現在は法人顧客が中心だが、ロボに興味がある人にも来てもらえたら」と話している。(高田祐樹)
ロボスクールで導入している歩行速モビリティの「ラクロ」(右)と無人宅配ロボの「デリロ」copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.