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2021年12月1日〜16日の期間、JP楽天ロジスティクスは都市部高層マンションにおけるドローンを活用した国内初のオンデマンド配送の実証実験を千葉県で実施したことを発表した。
楽天は2016年に、一般利用者を対象としたドローン物流サービスを提供。Eコマースを主体事業として創業した同社は、新たなテクノロジーをいかに利便性の高いかたちで利用者に届けられるかを追求してサービスを提供してきた。昨今では、レベル4の目視外飛行解禁に向けて各社がドローン物流に注力するなか、同社は利用者がドローンをどのようにショッピングや物流に使用するのかに加え、それにはどのようなシステムが必要とされるのかといった観点に重きを置き、ドローン物流の実現に取り組んでいるという。
利用者や運用者の使い勝手を優先した結果、事業開始当初から同社は完全自動飛行を可能にしたドローンを採用している。人手でドローンに荷物を搭載する必要はあるが、離陸から着陸、さらには荷物の切り離しまで自動で行い、そのまま帰還する運用を可能としている。これに加えて、利便性の向上に貢献しているのが、楽天ドローンのショッピングサイトだ。これはスマホアプリで利用することができ、ドローン配送の注文はスマホを通じて完結することができる。なお、JP楽天ロジスティクス ドローン・UGV事業部ジェネラルマネージャーの向井氏は、「今回はスマホで注文できる仕組みを採用したが、利用者によってはスマホの使用に慣れていない人もいる。そのため、すべてをスマホにするのではなく、電話や用紙による注文も地域特性や環境に応じて取り入れている」という。
千葉市はドローン配送構想を掲げ、東京湾臨海部の倉庫から幕張新都心内のマンション各戸への物資配送を目指している。今回の実証実験はこの構想に基づいたもので、直線距離約12kmの海上を自動で飛行し、倉庫から高層マンションの屋上へ荷物を運ぶといったものだ。なお、マンション住⺠に「ドローンで何が配送されると有用か」というアンケートを実施。その結果、実証実験は災害時における医薬品や生活必需品の配送に決定した。
実証実験は以下の手順で進められ、東京湾臨海部の倉庫から高層マンションへ緊急物資を配送することに成功している。
利用者はショッピングサイトから注文を行う。アプリでは重量インジケーターが表示され、商品を選ぶと重量が加算されていき、ドローンの最大積載量内に荷物の重量が収まっていないと注文できない仕組みとなっている。これに加え、ドローンに搭載されたGPSによってドローンの位置情報をアプリで表示し、飛行している場所と到着時間を視覚的に表示する。
利用者がスマホで注文した情報は、倉庫スタッフのタブレット端末に送信される。これを受けたスタッフは商品を準備する。
梱包した商品を受け取った楽天スタッフは、ドローンに荷物を搭載する。今回使用した物流用ドローンは楽天とCIRCが共同開発したものだ。⻑さ・幅175cm、高さ90cmと大型の機体で、最大積載量は7kgとなる。機体の選定について、向井氏は「レベル4の飛行が進むと、ドローンの運用は遠隔監視が基本となる。飛行中におけるドローンの機体情報やカメラ映像をリアルタイムに確認し、安全を担保する必要があることから、機体の信頼性はより一層重要視されていく。そこで、しっかり選定するためには、開発後にしっかり試験飛行を行っているか、適切な試験設備や手法を採っているかなどがメーカーに求められる」という。
楽天スタッフは安全を確認したうえで、離陸ボタンを押す。すると、ドローンは自動で飛行を開始し、目的地の高層マンションに向けて移動する。飛行中は遠隔監視を行い、各種センサーの値や搭載カメラによる周囲状況の確認が行われた。
離陸から海上を時速約50km/hで飛行し、約20分で荷物を配送した。今回の配送先であるマンションは、高さ100m以上で超高層マンションに分類(※)される。向井氏は「着陸地点は屋上とし、地上から100m以上の場所に離陸するためにはさまざまな創意工夫が必要だった」と話す。
※ 建築基準法上、高さ60m以上の建築物。
実証実験で荷物を受け取ったマンション住⺠は、「スマホひとつで注文でき、ドローンが実際に荷物を持ってきたことに大変驚いた。これまで使われてこなかった空から緊急性のある物資や医療品を届けるというのは、新たな可能性が感じられた」と話した。
最後に向井氏は「今回の実証実験で、渋滞回避とクリーンな物流につながる手段を構築できたと思う。また、17分で荷物を届けることができたことは、極めてオンデマンドに近い配送といえる。実証実験で得られたノウハウを踏まえて、レベル4の飛行と合わせて社会実装に取り組んでいきたい」と今後について説明した。