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square トヨタ出資の「空飛ぶ車」が中国製ドローンに勝つために必要なこと PEST分析で真の問題がみえる Find more articles Follow us on SNS

ANAホールディングスとアメリカの新興企業ジョビー・アビエーション社が2月14日、「空飛ぶ車」の事業において業務提携すると発表しました。「空飛ぶ車」とは、現状では「人が乗ることができるサイズのドローン」とご理解頂ければ間違いないでしょう。ジョビー・アビエーション社が開発中の電動式垂直離着陸機(eVTOL)は、低騒音で排気ガスゼロ。最大航行距離約270km、最高速度時速320kmを超える5人乗りのものです。この企業には日本のトヨタ自動車も出資していて、このANAとのプロジェクトにはトヨタ自動車も参画するとのことです。

現在、世界のドローン市場は中国のDJIが7割近くを占めている独壇場です。日本企業は規制などもあり市場参加が遅れ、技術的にもかなり遅れをとっているというのが現状です。飛行データの蓄積に差があるため、正確性・安全性にも埋めがたい差があると言われています。「技術のニッポン」「ものづくりニッポン」として追いついてほしいと考える日本人は多いのではないでしょうか。

しかし、この「空飛ぶ車」の成功において重要なのは、技術だけではありません。その点を基本フレームワークのPEST分析で確認してみましょう。

空飛ぶ車を「PEST分析」してみよう

PEST分析とはマーケティングの第一人者である、ノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールの教授、フィリップ・コトラー氏が提唱したものです。経営戦略や事業戦略、マーケティングを考える際に把握して対策すべき4つの項目が挙げられています。

の4つです。この4項目に沿って、「空飛ぶ車」を簡単に分析してみましょう。

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P:Politics(政治)

空飛ぶ車の場合、Politicsは主に法的な問題を指しています。

空飛ぶ車を実用化するためには、航空法や電波法、事故の際の責任の所在などの法整備が必要です。空港を作る時に毎回大きな問題が発生しますが、発着所などの確保も大事でしょう。

E:Economy(経済)

空飛ぶ車をめぐるEconomyといえばマーケットシェアや経済動向です。すでにかなり整備された物流、交通システムがある日本で、代替品として大きな投資をする企業が現れるでしょうか。また公共交通システムとして税金を投入する効果も考えなくてはなりません。他のインフラのない地域への公共サービスとしては採用されやすいでしょう。

S:Society(社会)

空飛ぶ車による事故の際、致死率は飛行機と同じだと思われますが、最初に事故が起きた時にはセンセーショナルに報道されるでしょう。世論が許容するには時間がかかると思われます。このようにSociety=社会動向も考慮しなければなりません。

T:Technology(技術)

空飛ぶ車を導入する際には、機体の技術はもちろんのこと、操縦者や整備担当者などの育成にも時間がかかりそうです。空飛ぶ車を活用するためのTechnology=技術革新も重要です。

「中国ドローン排除」政策が市場開拓の障壁に

このように、T=Technology(技術)以外にも大きな壁が存在するのです。たとえば、日本政府は2020年9月14日に、公的機関がドローンを新規に調達する際には、事前に計画書を提出して審査を受けることを義務付けた「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針」を発表しました。国家保安を考えた上での事実上の中国製ドローンの排除といわれています。このように「政治的理由」によって市場開拓がうまくいかないということもあるわけです。

逆に考えると、日本は技術的には中国に遅れをとっていますが、ある程度の品質までキャッチアップした上で、進出市場においてP、E、Sの3つの分野で評価を得ることができれば中国製品が抑えている市場での勝ち目も出てくると言えるでしょう。