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2020年と2021年に航空法の改正が成立しました。
これに伴い、下記項目の制度内容が大きく変更します。
・機体認証制度・操縦ライセンス・運行管理のルール・所有者の把握ドローン飛行に関してのルールや手続きは具体的にどのように変わっていくのでしょうか。
今回は改正航空法の概要や現時点で明らかになっている情報について、株式会社ジーテックさんへの取材を元に、前編・後編に分けて解説していきます。
前編となる本記事では、改正項目の中から機体認証制度、運行管理のルール、所有者の把握の三つを説明していきます。
日頃ドローンを使っている方やこれからドローンに挑戦しよう思っている方は、是非参考にしてください。
もくじ
法改正により変更する項目は以下の通りです。
■機体認証
■操縦ライセンス
■運行管理のルール
■所有者の把握
現時点では法律が成立しているのみで、施行は来年以降を予定しています。施行時期はそれぞれ異なるタイミングになるそうです。また細かいルールは国土交通省の方で省令や施行例・施行規則として定められていく予定です。
国土交通省が出している情報を項目別に解説していきます。
機体認証制度の運用イメージは以下の通り。
概要・国が機体の安全性を認証する制度(機体認証)を創設・型式認証を受けた型式の無人航空機について、機体認証の手続きを簡素化・使用者に対して、機体の整備を義務付け、安全基準に適合しない場合には国から整備命令・設計不具合における製造者から国への報告義務・国の登録を受けた民間検査機関による検査事務の実施を可能とするなど今現在も、DJIなど多くのドローン機体はHP掲載機という形で安全認証されています。
しかし今後は、ドローン機体が国土交通省が定める安全基準に適合するかどうかを検査し、適合すると判断されると機体認証書が交付される流れに変わります。
検査過程には、有人機と同様に型式認証制度も組み込まれる予定です。
一つ一つの流れを詳しく解説します。
機体認証制度の施行時期は、2022年(令和4年)12月頃を予定しています。今年度中に機体の安全基準の方向性が示されるそうです。
安全基準とは、国土交通省が定めるドローンについての安全性を確保するための強度、構造および性能の基準です。
機体認証制度においては、上記の安全基準にドローンが適合する機体かどうかを「設計」と「製造過程」、「現状」という観点から検査します。「設計」は開発時に実機で検証し、「製造過程」は製品の均一性を審査します。
安全基準に適合する場合は、機体認証が行われ機体認証書が交付されるという流れです。
本改正法132条の14によると、機体認証の際に使用条件が指定されることがあるようです。その場合、当該使用条件の指定範囲内でなければ特定飛行を行えません。また本改正法157条の9第3号によると、違反時には50万円以下の罰金の対象となるようなので注意しましょう。
本改正132条2項によれば、機体認証を受けた後も定期的に必要な整備を行い、当該機体が常に安全基準を満たすよう維持する義務があります。
また本改正132条の15よると、これに反する場合は、国土交通大臣から、整備命令や機体認証の効力停止等を受けることもあるようです。
機体認証には、第一種機体認証と第二種機体認証の2種類があり、それぞれドローンの飛行レベルに合わせて取得が必要です。
当面は、第一種については国が検査を行い、第二種に関しては登録検査機関が行います。
現在のドローンの飛行は4つのレベルで表されています。それぞれの目安は下記の通りです。
レベル1:目視内での操縦飛行(例:空撮など)レベル2:目視内での自動飛行(例:測量飛行や農薬散布飛行など)レベル3:無人地帯での補助者なし目視外飛行(例:山間部等の無人地帯の荷物輸送など)レベル4:無人地帯での補助者なし目視外飛行(例:第三者上空を飛行して荷物輸送など)第一種機体認証はレベル4の飛行を行うために必要です。
第二種機体認証は一部の飛行について許可・承認手続きを行わずに操縦できるようになります。具体的な飛行内容は、「人口集中地区」・「夜間飛行」・「人・物件30m未満」・「目視外飛行」です。また現在規制対象となっている「空港周辺」・「高度150m以上」・「イベント上空」・「危険物輸送」・「物件投下」・「一定の重量以上」については許可・承認手続きが必要ですが、審査が一部省略されます。
型式認証制度は、ドローンの機体認証制度に関連する「設計」と「製造過程」についての認証制度です。第一種型式認証と第二種型式認証があり、それぞれ機体認証制度の第一種機体認証と第二種機体認証と対応しています。
型式認証制度を行うには、まずドローン製造者が国土交通大臣に申請を行うことが必要です。その後、申請に係る型式のドローンが安全基準および均一性基準(国土交通省が均一性を確保するために必要と判断した基準)に適合するかどうかを判断します。
適合する場合は、型式認証を行い、型式認証書が交付されるとう流れです。
本改正法132条の13第5項および第6項によれば、型式認証を受けたドローンは機体認証の検査を簡略化する効果が期待できるようです。
参考:https://businessandlaw.jp/articles/a20210608-2/#note11
以上の説明を受けて、機体認証制度に関して「要はドローンの安全性を確認するための制度なのであれば、従来の安全認証と大差ないのでは?」と思う方もいらっしゃるはず。
今回の法改正で大きく変わると言われているのが、自作機(農薬散布に使われる農業用ドローンなど)の機体についての申請方法です。
機体認証制度では安全基準のハードルが高くなるため、自作機が認証されづらくなる可能性があります。
量産機であれば型式認証を受けて検査の一部または全部を簡略化することができますが、自作機の場合は「設計」と「製造過程」そして「現状」のすべてをしっかり検査しなければいけないのです。
現在自作機のドローンを使っている方は、機体認証制度の最新情報を常にチェックするようにしておきましょう。
運航管理のルールは、実際にドローンを飛ばす方に大きく影響します。ルールに反すると、罰則を受けることになるので注意しましょう。
2022年(令和4年)12月頃に施行予定です。
飛行計画は、FISS(飛行情報共有システム)と呼ばれる飛行前の登録義務と同様に、飛行の日時、経路、高度等の情報を通報します。
これまでは法律上の義務はなかったため、守られない場合でも罰則はありませんでした。しかし2022年4月以降は法律としてさだめられるため、登録しないで飛行させると罰則を受けるので注意しましょう。
飛行場所、飛行時間、整備状況等の情報を日誌に記載します。
現在も「飛行実績」と呼ばれる飛行の記録を作成して自身で保管しておく義務があります。ただし保管しておかなくても、罰則がない状態でした。
法改正後は、日誌の作成・保管を怠ると罰則を受けます。
人の死傷、物件の損壊、航空機との衝突等の事故が発生した場合に国土交通大臣に報告する必要があります。
今まではドローンによる事故が発生しても報告するべき場所がきちんと定められておらず、警察や消防などと適宜調整する流れが一般的でした。
今後は人が亡くなる、物件が損壊するといった場合は国土交通大臣への事故報告が義務化されます。報告を怠ると罰則が生じるので常に安全に気をつけてドローン操作を行いましょう。
自身が操縦する無人航空機によって人が負傷した場合に、その負傷者を救護しましょう。
事故の報告・負傷者の救護は許可や承認を得る必要のない飛行の場合も対象です。
現在もドローン使用の申請時には所有者の情報が登録されています。今回の法改正では、改めて登録制度ができると同時に、手数料が発生する仕様に変更するそうです。
さらに登録手続きには、リモートIDの搭載が義務付けられるのが大きな変更点です。
所有者登録制度の詳しい内容や、リモートIDについて解説します。
■2021年12月追記
ドローンの機体登録制度は2022年6月から義務化されます。最新情報と手続きの詳しい進め方を解説した記事はこちらから。
ドローンの機体登録制度が2022年6月から義務化!徹底解説します【事前受付開始中】
所有者登録制度は、無人航空機の所有者(使用者)の氏名・住所と、機体の情報を紐づけて管理するための制度です。
今回の施行によって、登録・許可承認の対象となる無人航空機の範囲が変わります。現行200g以上から100g以上に拡大されるので注意しましょう。
また新たに手数料を払って登録する仕組みに変更されます。
アメリカでは同様の制度において5ドルの手数料がかかりますが、日本でもだいたい500~1000円を払うことになるのではないかと考えられています。(※正式な金額は未定です)決済方法は電子決済が主流となる可能性が高いです。
どのような流れで登録手続きを行うのか説明します。
国土交通省側はどのように情報を管理しているか、解説します。
キャプチャ機器は航空局や重要施設管理者、警察官などが管理・操作する想定です。
リモートIDとは、ドローンの機体にくっつけて「誰が」「どこで」飛ばしているかをわかるようにするためのものです。
施行時期は来年2022年(令和4年)の6月頃を予定しています。
リモートIDは24gのものから80gのものまで幅広い重量のため、100g強の機体に搭載すると飛ばなくなることも懸念されています。そのため今後はより一層軽量化されていくはずです。またリモートIDの規格を国が定めることで、各メーカーが開発する流れになっていくと言われています。
ただしユーザーが各メーカーが開発したものを任意にセレクトすると、既存の機体に外付けすることになるので、合う・合わないという問題が発生しかねません。そこで機体に合わせたリモートIDの発行が必要になります。
今後発売されるドローンにはすでにリモートIDが内蔵された構造になるでしょう。
法改正に伴い、ドローンスクールに関する認識で注意すべき点を紹介します。
A.不可です。法改正はこれまでと全く別の制度となるため、あらためて登録手続きを行う必要があります。
また現在の航空局へのHP掲載制度は、国土交通省が認定しているわけではありませんが、模範的なスクールである証明になっているという位置付けです。そのため認定・登録は一切行われていません。
国土交通省からの認定を受けている、もしくは登録機関であるとニュアンスの表記している場合は、速やかに修正し法改正に合わせて登録手続きを行うようにしてください。
航空法の改正に伴う各種制度の変更点や詳細について、現時点で明らかになっている情報をまとめてご紹介しました。
ドローン使用に関する手続きやルールが従来と大きく変わるところも多いので、しっかり頭に入れておきましょう。また最新情報についても追ってお伝えします。
後編となる次回の記事では、操縦ライセンスについて解説します。
行政とテクノロジーの融合を軸としつつ、社会全体の発展に資するサービスを開発することを目的としたベンチャー企業。
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