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生まれて初めて自分のカメラを買ったのは、2019年の夏のことだった。命よりも大切なニコンの「Z6」である。この大切な「いとしいしと」[編註:『指輪物語』のゴクリ(映画版はゴラム)のセリフ]を安全に保管できるカメラバッグを見つけるべくネット上を探し回ったが、残念ながら目ぼしいものは見つからなかった。
カメラバッグは機能性と同じくらい外観も大切だ。そこで今回、あらゆるニューヨーカーがとるであろう行動に出た。ニューヨーク最大のカメラ用品店のひとつ、「B&H」に足を運んだのだ。
店に並ぶさまざまなバックパックやメッセンジャーバッグに手もちの機材や荷物をすべて詰め込んでは取り出し、結局この日はB&Hの2階で数時間を過ごした。Domkeのバッグはどうだろう? ちょっと心もとない気がする。Peak Designは? デザインが個人的にあまり好きになれない。
そして『ホビットの冒険』に登場する竜「スマウグ」のような唸り声を上げながら、あちこちを探し回った。ほかの客たちは怖がっていたことだろう。そうしているうちに、ついに「それ」が目にとまった。その落ち着いたグリーンの色合いに目が釘付けだ。美しい!
そのバックパックの表には「WANDRD」というブランドロゴがついていて、タグには「PRVKE」とある。読み方は「プレヴケ」だろうか? このブランドは母音をひどく迫害しているようだが、そこは無視することにした。なぜならバックパックの見た目が素晴らしく、すべての機材が余裕で入るうえに耐久性もありそうだったからだ。
結局、その日はこのバックパックを背負って店をあとにし、その後は毎日のように使い続けた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、人生に待ったがかかるまでは。
現在、世界の一部の地域はゆっくりではあるがパンデミック前の生活に戻りつつある。そうしているうちに、製品名である「PRVKE」の読み方が「プロヴォーク」であることを学び、WANDRD(ワンダード)がこのバックパックの“ヴァージョン2.0”を発売したことを知った。もともと完璧に近かったバックパックが、まったく非の打ちどころのないものになったのである。
新しいPRVKEはサイズのヴァリエーションがこれまでになく多く、11リットル、21リットル、31リットル、41リットルの4種類ある。個人的には「PRVKE Lite」とも呼ばれる11リットルと、31リットルの「PRVKE 31」を使い分けている。PRVKE Liteは軽量かつコンパクトで、カメラを持って街をうろつくときにぴったりだ。重さが約3.5ポンド(約1.5㎏)あるPRVKE 31のほうは、もっている機材をすべて持ち運ばなければならないときの定番になっている。
色はブラック、エーゲブルー、ワサッチグリーン、ゴビタンの4種類から選べる。WANDRDから送られてきたレヴュー用のバックパックはブラックで、目立たないようにしたいときにはいい色だ。自分で選ぶとしたら、もうちょっと目立つためにほかの色を選んだだろう。人生には多少の華を添えたい(ただし、どの色もかなり地味であることは認める)。
色のことはさておき、PRVKEにはシンプルでありながらエレガントさを感じさせる何かがある。『指輪物語』に出てくるエルフのマントのように、その機能性は驚くほど巧妙に隠されているのだ。