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米アマゾンがドローンを配送に使用するという大胆な計画を打ち出したのは、今からおよそ8年前、2013年12月のことだ。それから長い年月が経過し、アマゾン以外にもさまざまな大手企業がドローン配送の実現に取り組んでいるが、いまだに私たちの注文した品は人間の配送員が届けてくれている。
もちろん実証実験や地域・品種限定でのドローン配送(アフリカでの医療品の配送や離島への手紙の配送など)は少しずつ成功を収めるようになってきているので、まったく実現されていないというのは語弊がある。ただアマゾンは2013年の計画発表当初、「早ければ2015年にドローン配送をスタートさせる」と言っていただけに、期待外れになっていることは否めない。
ドローンを使って「30分配送」を実現するというビジョンを描いていたアマゾン(2015年の動画)
ドローン配送の普及を阻んでいるのは、技術的な要因だけではない。単にドローンに荷物を載せて飛ばせば良いのであれば話は単純だが、社会的、制度的な理由がそれを複雑にしている。規制ひとつ取っても、ご存知の通り目視外飛行には各国で厳しいルールが設けられており、完全に自律型のドローンが市街地を飛ぶというのは、現時点では不可能に近い。日本では2021年3月に、国土交通省から「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」が発表されたが、ようやく本格的なルール整備が始まったところと言えるだろう。
さらにドローンを、現在の個別住宅への宅配サービスと似たような形で使うのであれば、市街地における騒音やプライバシーへの配慮といった問題にも取り組まなければならない。それはたとえば、自動車が一般社会に普及し始めた頃にさまざまな課題が生まれたように、ドローン配送に限られた話ではない。新しい技術を日常生活で手軽に利用できるものにするためには、さまざまな「環境整備」に取り組む必要があるのだ。
そうした「環境」のひとつが、ドローン配送の際に受け取りをどうするかという問題である。人間であれば、配達先の状況に臨機応変に対応できる。たとえば住民が住宅内にいるのに、何らかの理由で出られない場合には、許可を得た上で「置き配」に切り替えるといった具合だ。しかし配送用ドローンにもそこまでの対応を求めるのであれば、さらに高度なAIが開発されるのを待たなければならなくなってしまう。そこで登場しているのが、ドローンだけでなく、荷物を受け取る「郵便受け」の側も進化させようという発想だ。