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世界初となるバッテリー交換式の完全無人運転大型電動トラック「Q-Truck」
AIや無人運転技術を開発する「西井科技(Westwell)」が1月15日、上海市で記者発表会を開き、世界初となるバッテリー交換式の完全無人運転大型電動トラック「Q-Truck」の量産を始めたと発表した。西井科技の無人運転開発部門は2016年に設立され、拠点は上海市にある。AIを手掛ける企業として昨年、中国政府が中小企業育成のために推進する政策「専精特新(専門化・精密化・差別化・革新化)」に合致する国家レベルで優秀な新興中小企業と認定された。同社は2018年、自動運転のブランド「Qomolo(逐路)」を独自に開発。20年にはQ-Truckのプロトタイプの生産を開始している。西井科技は昨年7月に開催された「世界人工知能大会(WAIC)」でQ-Truckを展示した。積載量は80トンで、航続距離は200キロに達するという。運転席を無くし、車両前方にはコンピューティングシステム、センシングシステム、冷却システム、電池システムを集約した。このほかQ-TruckはAIカメラ、LiDAR、ミリ波レーダーなどのセンサーを搭載。ルーフには高精度のGPS受信機を設置している。Q-Truckはすでにタイ、アラブ首長国連邦(UAE)、中国国内では新疆ウイグル自治区で実際に利用されている。西井科技は2020年より「和記港口(HUTCHISON PORTS)」と提携し、タイで世界初となる港湾の無人コンテナ輸送プロジェクトを実現した。昨年10月には「中遠海運港口(COSCO SHIPPING Ports)」がアブダビと共同で現地に建設したコンテナターミナル(CSP Abu Dhabi Terminal)で、Q-Truckをすでに稼働させたと発表している。昨年11月、同社は複数の用途に対応できる無人運転車両プラットフォーム「Qomolo One」を発表。Q-Truckと同様に運転席をなくした設計で、車両本体をモジュール化し、各モジュールを組み替えられる。発表会の場では、無人運転トラックとして登場したQomolo Oneが全長14メートルの無人運転バスに姿を変えて見せた。Qomolo Oneは車体に航空宇宙用のアルミニウム合金を採用。搭載されたLEDパネルは運転中の判断事項や車両のステータスなどの情報をリアルタイムで表示できる。さらに、高解像度の産業用カメラやLiDAR、ミリ波レーダーなど複数のセンサーを組み合わせたセンサーフュージョンシステムを使用している。創業者の譚黎敏氏は過去に「新エネルギー分野を強化する以外にも、港湾を起点として物流資源の分配と輸送ネットワークに力を入れていく」と述べている。同社は今年、世界4カ国で同時に無人運転車両のバッテリー交換事業を限定的なシーンで開始する予定だ。今後、Qomoloシリーズは全面的にバッテリーの充電・交換、エネルギー転換を可能にしていくという。世界的な新型コロナウイルス流行と貨物取扱量増加の影響を受け、多くの港湾で貨物処理能力が伸び悩むなか、トラックドライバーにかかる過剰な負担と処理能力の解消という相反する問題がより顕在化している。港湾での集配効率に影響が出ているだけでなく、人件費も高止まりしたままだ。さまざまな要因が重なり、港湾は無人運転技術の新しい応用シーンとなっている。中国国内では西井科技以外にも「Pony.ai(小馬智行)」「踏歌智行(Tage I-driver)」「Inceptio Technology」などのAI企業が自動運転トラックに注力している。海外では「TuSimple(図森未来)」が自動運転トラック開発分野で初の上場企業となった。無人運転の応用シーンが細分化するにつれ、港湾の無人運転にはさらに多くの企業が参入することになるだろう。