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文:古屋陽一 2011年の設立以降、モバイルゲームを中心に、独特の世界観を構築した作品を数多く手掛けてきたRayark。2021年に創業10周年を迎えた同社が、“10周記念タイトル”として2022年1月13日に配信されるのがAndroid/iOSタイトル『DEEMO II』だ。【この記事の画像をもっと見る】『DEEMO II』2022年1月13日に基本プレイ無料で配信。50人を超えるキャラクターが登場https://www.famitsu.com/news/202112/24246058.html 2013年にスマートフォン向けに配信され、その後家庭用ゲーム機向けにリリースされるなど、Rayarkを代表するタイトルの1本とも言える『DEEMO』。その続編として、満を持して発売される『DEEMO II』は、さまざまな楽曲を演奏するリズムゲームパートと、物語の真実に迫っていく探索パートを組み合わせたゲームシステムがさらに進化。リズムゲームパートでは、前作よりもノーツ数を増加し、曲の速さが変化する楽曲が収録されるなど、より遊び応えのある内容になっている。一方の探索パートでは、謎解き要素や演出面が強化され、深みを増したストーリーが楽しめるようになっているのだ。 物語の舞台は、雨が絶えることなく降り続いている世界。その雨に濡れた生き物は白い花びらとなって消えてしまうため、人々は大きな駅に身を隠しながら生活することに……。主人公の女の子エコーは、雨を止める方法と答えを探すため、人の姿をした守護霊“Deemo”と力を合わせて駅の中を探索していくことになる。 探索の最中でエコーは、同じく駅で暮らしている住人たちと出会う。彼らと触れ合って悩みを解決しながら、降り続く雨の謎を解く手がかりを徐々に見つけ出していくというのが『DEEMO II』のおおよそのストーリーだ。 ここでは、CEOであるミンヤン・ユウ氏に、10周年を迎えてのRayarkでの日々に対する手ごたえや『DEEMO II』に対する思いなどを聞いた。多くのユーザーに楽しんでもらうためスタッフ全員で歩んできた10年間――Rayark が2021年で10周年を迎えたということでおめでとうございます。10周年を迎えての率直な感想をお聞かせください。ミンヤン この10年間にはいろいろなことがありましたが、いまではあっという間に過ぎてしまったという感覚です。無事10周年を迎えることができて本当によかったです。――10年間でとくに印象深い出来事などはありましたか?ミンヤン Rayarkとは直接関係のないことかもしれませんが、スタジオ設立時、創業メンバー全員が独身だったんです。けれど10年が経ち、ほとんどのメンバーが結婚して、子どもがいるというのがすごく感慨深いですね(笑)。スタジオとしても、当時は15人しかスタッフがいなかったのですが、いまでは300人近くになっていて、こんなに増えるとは正直思っていませんでした。――10年の月日の重さを感じますね。この10年間、貫き通していることや、変わらずに持ち続けいるポリシーはお持ちですか?ミンヤン Rayarkでは、ゲームの芸術性とビジネス性のバランスをずっと大事にしています。お金儲けのために芸術面を捨てることはせず、とはいえ、クオリティーにこだわるあまり、ビジネス面を疎かにしないように取り組んでいます。――ああ。そのバランスを取るのは難しいと思いますが、ご自身の感覚で運営されているのですか?ミンヤン わたしひとりの感性というよりは、10年前からいまに至るまでプロフェッショナルなスタッフをずっと募集してきて、スタッフ全員で守っているという感じです。――この10年間で、会社としての転機になった印象深い出来事はありましたか?ミンヤン 2016年前後にスタッフが約100人になったのですが、それをきっかけに、小さなゲーム開発のチームという感覚でやってきたものから、大きな会社としてやっていこうということになりました。私の中では、そこがひとつの転機だと思っています。 少人数だったときは、自由度は高いものの、ひとりひとりのやることが多かったのですが、スタッフが増えるに従い、自分のやるべきことに集中できるようになった点と、会社の管理的な問題としてルールを定めなければならなくなり、それに慣れていく必要がありました。――この10年間、続けて来られた理由はどこにあると自己分析していますか?ミンヤン ここまでがんばって来られたのは、Rayarkのクリエイターたちの思想を形にしてプレイヤーに届けて、多くの方に喜んでもらえたことです。皆さんからたくさんのフィードバックをいただけたことが、これまでがんばって来られたいちばんの理由です。――2015年に日本のオフィスを設立して、日本市場での手ごたえはいかがでしょうか?ミンヤン ゲームやアニメ好きの人間にとって日本は憧れの国ですし、ゲームやアニメ好きの人間にとって日本は代表的な国ですし、数多くの人気作品が世に出ていることもあって、日本のプレイヤーに遊んでもらうことへのプレッシャーがありつつも、とても大事な市場だと思っています。 これまでに、日本のコンポーザーやアニメーション制作の方々といっしょにお仕事をさせていただきましたし、Rayarkのタイトルが、「日本の会社が作ったゲームのように感じる」とよくおっしゃっていただけるのも、私たちが小さいころから日本のゲームをずっと遊んできたことにも、影響されているのではないかなと思っています。――現状は日本市場の手ごたえに満足していますか?ミンヤン 会社を経営するにあたって満足する日は来ないと思っています(笑)。ファンから愛されるストーリー、よりゲームの世界観を味わえるものに――なるほど(笑)。ここからは『DEEMO II』のお話をお伺いしたいのですが、発売間近になって、どのようなゲームになっていますか?ミンヤン 『DEEMO』は、Rayarkにとって大切なIPのひとつですし、「前作を越えることができるのか」というところが大きな問題点としてあって、なかなか『DEEMO II』の制作に踏み出せなかったというのがあります。 『DEEMO II』のストーリーのおおよそは、2017年ころにはすでにできあがっていました。そこから2年が経って、2019年くらいにやっと開発をスタートした形になります。――『DEEMO II』のストーリーは、前作とつながっているのですか?ミンヤン 前作のストーリーは完結しており、綺麗にまとまっているものだと思っているので、その後のストーリーを続けていくことはありません。ですが、『DEEMO』のストーリーにおいては、“神秘的な世界観”や“温かみのある世界”、“感動的なストーリー”の3つのポイントを大事にしていて、『DEEMOII』でもそれを大切にした新規のストーリーになっています。 また、『DEEMO II』の中にはたくさんの秘密が隠されていまして、前作ではキャラクターなどをタップしたらセリフが出てきたのですが、本作ではNPCと会話ができたりするなど、RPGに近い探索していく感じのゲームになっています。――『DEEMO II』では、ストーリーの3つのポイントを大事にしつつ、進化した要素がNPCとの会話やRPGとしての探索要素なのですね。ミンヤン 前作は音楽ゲームでありつつも、ストーリーがファンから愛されたゲームだという認識でいるのですが、『DEEMO II』では、ストーリーの部分をさらに前作までとは違った方向で楽しめるようになっています。――本作のストーリーやテーマはどのようなものになっているのですか?ミンヤン 本作の世界は、雨が降り続けている世界です。その雨は当たった生物を花に変えてしまうんです。それで、主人公であるエコーとDeemoは、雨を止める方法を探しに冒険に出て、いろいろなことをしていくというストーリーになっています。全体的な世界観としては“温かくて美しい世界の終わり”という感じです。 『DEEMO II』での音楽は、楽曲を演奏すると、音楽のあるところだけ雨が一瞬止むという役割になっています。――『DEEMO II』では駅を舞台にしていますが、その理由を教えてください。ミンヤン すごく大きな理由があるのですが、ネタバレになってしまうのでいまは言えません。ですが、プレイヤーが遊んでいくうちに、その理由は明らかになっていくでしょう。――『DEEMO II』でもっとも注力したポイントは?ミンヤン もっとも大切にしているのはストーリーではあるのですが、映像表現にもこだわりました。本作では2Dのイラストを3Dの方法で表現していまして、手書き風で描かれるゲームの世界を、カメラの角度を変えたりして探索することができるので、ゲームを遊んでいるというよりは、アニメを見ているような感覚で遊んでもらえるのではないかと思っています。――技術的には新しいチャレンジだったのですか?ミンヤン そうですね。いままでにあった技術を応用したり、自分たちで作り出したものを使ったりと、いろいろ組み合わせて3Dの世界観を、手書き風の2Dの世界観に落とし込んでいます。――芸術性という観点から、クオリティーの高い映像表現を志向しているのでしょうか。ミンヤン ゲームを作るだけであれば、ここまで苦労して描く必要はないのかもしれないですが、「クリエイターのイメージしているものをできるだけプレイヤーに楽しんでもらいたい」という想いから、素晴らしい世界観をお届けできればと思っています。「これでは満足できない」とやり直しながら、ずっと模索しています。すばらしいものを皆さんにお届けしたいです。――『DEEMO II』のこだわりとして、このストーリーにはこのビジュアルでなければいけないというところからきているのですか?ミンヤン そういうわけではないのですが、一種の自己満足的な部分もありまして……(笑)。端的に言うと、自分たちがこのビジュアルで出したかったからですね。――音楽パートも前作から進化しているとのことですね。ミンヤン そうですね。新しいノーツを考えていて、ホールドノーツが増えます。それ以外にもスピードが変化するような楽曲もありますよ。 あとは収録楽曲の種類としては、いい音楽だけど音楽ゲームではあまり見たことがないような曲を入れたいと考えています。音楽ゲームというと、これまではリズム感の強いアップテンポの曲が多かったと思いますが。『DEEMO II』ではゆったりとしたリズムの楽曲もたくさんあって、全体的にやさしい感じの楽曲が多数収録されています。――新しいインタラクティブな要素を追加することで、どのようなゲーム体験を味わってほしいですか?ミンヤン いろいろなキャラクターたちと触れ合うことで、よりゲームの世界観に入り込めるようにしたいと考えています。物語を読み進めながら、その中で描かれる人やモノと触れ合えるような感覚を味わっていただきたいです。――11年目に入って、今後予定しているタイトルなどありましたら、お教えください。ミンヤン 本作以外にもいろいろと開発を進めているのですが、まだ情報を公開することができません。ですので、いまは『DEEMO II』を楽しみにしていただければと思います。――今後に向けてのRayarkの方針や戦略を教えてください。ミンヤン 最近では、スマートフォンなどのデバイスも進化してきて、家庭用ゲーム機との差が埋まってきていると感じています。スマートフォンも含めた、すべてのプラットフォームを対象にゲームを開発していきたいというのがRayarkの戦略となります。 たとえば、『DEEMO-Reborn-』は、どのプラットフォームでプレイしても遊び応えは変わらないと思っているのですが、こういった感じで、マルチプラットフォームで展開できるタイトルを徐々に増やしていければいいなと思っています。――最後に、Rayarkのファンに向けてメッセージをお願いします。ミンヤン 『Cytus』から始まり、これまでにたくさん応援していただきありがとうございます。みなさんのフィードバックが私たちのゲーム開発の糧となっています。今後の10年もよりよいゲームを作り、Rayarkを知っている方はもちろん、まだ知らない方にも感動をお届けできるようにがんばっていきますので、よろしくお願いします。 なお、『DEEMO』シリーズ1作目を原作とした劇場長編アニメ『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』が、2022年2月25日からいよいよ公開予定だ。本作では、記憶を失った少女と、ピアノを奏でる謎の存在“Deemo”が紡ぐやさしくも儚い愛の物語が、声優の竹達彩奈さんを始めとした豪華キャストと、総監督の藤咲淳一氏が率いるスタッフ陣によって描かれる。『DEEMO』ファンにとって見逃せない1作だ。
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